アマゾンはもはや南米の気候をつかさどる機能を果たせず、ブラジルは集中治療室(UTI)に入院中―。10月30日にサンパウロ市で発表された『アマゾンの将来の気候』と称する報告書が、アマゾン伐採と全国の異常気象との関係についての警告を発したと10月30日付G1サイトやアジェンシア・ブラジル、31日付伯字紙が報じた。
この報告書は南米地区の複数の非政府団体が参加するアマゾン地域調整(ARA)の要請によって作成されたもので、統括責任者は国立宇宙調査研究院(Inpe)のアントニオ・ドナト・ノブレ研究員だ。同氏らは論文など約200点を分析し、アマゾンはもはや、海上で発生した雲に更に水分を送り込み、南の地域に雨を降らすという機能を果たせなくなってきていると結論付けた。
同報告書によると、アマゾンは「生物学的な水のポンプ」の役割を果たしており、北東伯沖の大西洋上で発生した雲は、北東伯上空で雨を降らせた後、アマゾン上空で豊富な水蒸気を受け取って更に大きく発展。「大気の川」に乗った雲はアマゾンに雨を降らせた後に西進するが、アンデス山脈に阻まれて進めず、山脈に沿うようにして動いて中西部や南東部、南部に雨をもたらす。
ところが、過去40年間に76万2979平方キロ、1分間に2千本というペースで森林伐採が進み、アマゾンは森林の20%を喪失。樹木が年をとって呼吸機能が落ちた区域なども含めれば約40%がポンプを回す役割を失っており、アマゾン上空で出来た雲も以前なら届いていた地域まで届かないため、少雨、干ばつを引き起こす。
アマゾンや大西洋岸森林地帯(マッタ・アトランチカ)などの伐採が進むと、地中や樹木の中に雨水を留めておく事も水蒸気を放出する事も出来なくなる。また、大雨が降ると洪水や土砂崩れに繋がる危険性が増し、土地の侵食が更に進む。
ノブレ氏によると、アマゾンは「生物学的な水のポンプ」を回す役割を担えなくなってきている上、伐採拡大で「大気の川」の流れに変化が生じると、森林が放出する水蒸気を含んだ雲は、海上や海岸部のみに雨を降らすようになる可能性がある。この状態に地球温暖化が重なれば、アマゾンがサバンナに変わる可能性も生じるという。
報告書によると、高さ20メートルの木は1日1千リットルの水分を放出するが、伐採後に出来た牧草地の水分放出量は1日1ミリ。現在のアマゾン全体の水分放出量は1日平均4ミリで、1平方キロ当たり4リットルしか放出していない。
ノブレ氏は、同報告書の発表は啓蒙のためで、最低でも伐採ゼロを目指し、再植林などを含む状況改善を行う事が急務と強調している。