数年前から記事にルビを打ち始めた。移民世代が減り、共に購読者も―というのが従来の認識だったわけだが、準二世や二世の人で漢字が苦手なだけで日本語を読むのは基本的に支障がない人が結構多いことに気がついた。購読者が目立って増えたということはないが、時折「読みやすくなって助かる」という声を聞くので多少の垣根は取り払われたのかな、とも思う。一方、「間違いが多い」とのお叱りも受けるので難しいところだが▼今回、本紙はそのもう一歩先を行くこととなった。昨年日本で出版された『共生の大地アリアンサ』(木村快著)のポ語版を、日本語編集部がコーディネート役となり出版した。新聞の先輩に報告すると「こういう事業が必要になるだろうと80年代から思っていたのだが…」と感慨深げだった。つまり、そういう時代が来たわけだ▼常々、「日本語で書き残しておけば、後世に資するはず」と思いで、移民の証言を記事に残してきた。2011年に出版した『アマゾン』は日ポ両語だったが、今回は完全ポ語だ。ちなみに、昨年本紙で連載した「日本移植民の原点探る~レジストロ地方入植100周年」が今月、日本で出版される。この二つの出版は、邦字紙の役割の変化を象徴する一つのターニングポイントのように思うのだがどうか▼『共生のー』は、日本で10年以上調査された木村快さんの作品だ。その思いを伝えるべき次世代に繋げたと思うと嬉しい。なお2012年に出版された『アリアンサ移住地創立八十年』のポ語版も今月刊行された。日本移民の歴史が次世代に繋がっていくことを願う。(剛)