リオデジャネイロには、約20年以上にわたり、数えられないぐらい「訪問」しているが、リオに事務所を置き、住人になってみると、これまで出張ベースで行っていた頃には見えなかったことに気づく。
例えば、サンパウロとリオでは使う言葉も違う。私はマンジョカが好きで良く食べるが、これがリオではアイピン(AIPIM)となる。夕食の時に、マンジョッカ・フリット(キャッサバ芋のフライ)を頼んだら、店員がポカンとしているので、てっきり私の発音が悪かったのかと思ったが、そうではなく言葉が違ったのである。
また、昼食時にポルキロに行こうかと言うと、「リオではポルキロとは言いません。ア・キロです」。夕食のレストランで会計をしようとして、いつも通り「ア・コンタ」と言おうと思ったら、横からリオの友人が「フェッシャー」と。よく耳を澄ませば、みんなそう言っている。所変われば、である。
そんなリオで、近頃最も驚くのは、やはり物価である。サンパウロでも、デフレが長く続いた日本と比べれば何でも高いが、リオはさらにその上をいく。私の感覚では、スーパーなどで販売されているもので、5〜10%高い。レストランや外食はさらに20%程度違う気がする。
かつての首都であり世界的観光地なので、多少高くても当たり前だが、観光客向けではない店も総じて高い。ある顧客の薬局ルートの販路開拓を手伝った際に、ブラジル全国薬品販売協会の方から薬局で売られている全製品のリストと州別に分かれた細かい販売価格が掲載された分厚い冊子をいただいた。
薬品は特殊な物なので、極端に高く売ったりしないように、販売しても良い価格の上限が決められており、それも全国一律ではなく、州によって違う。ここでも全国で一番販売価格を高くして良いのがサンパウロではなく、リオであった。ブラジルの販売の難しさは、このように州ごとに販売価格を調整していかなければならないところにもある。
さらにスーパーや薬局チェーンのブランドも違い、サンパウロでは見ない「PACHECO」という薬局が至る所にあったり、スーパーも「Zona Sul」や「Mundial」などを良く見かける。
ブラジルは州やエリアによって、このようにチェーンのブランドも違っており、北部・北東部に行けば、われらが日系の大手スーパー「Y・YAMADA」が最大手で数十店舗展開している。
ブラジルの個人消費は現在約120~130兆円ぐらいと推測されるが、そのうち、3大スーパー(カルフール、ウォルマート、ポン・デ・アスーカル)の占める割合はわずか3%〜4%程度。
モノによっては一つの問屋に納めれば広く行き渡ることもあるが、大抵は店頭に商品を流通させるために、地域ごとに様々な会社と交渉をしなければならず、各地に拠点や代理店を設置する必要がどうしても出てくる。国土の広いブラジルの営業は体力勝負である。(輿石信男・株式会社クォンタム代表取締役、ニッケイ新聞東京支社長代理)
2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。[/su_service]