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田中公道さん「ブラジルは特別な国」=17回目公演終え心情吐露

 イタリア・オペラの専門家で、元大阪芸術大学教授の田中公道さん(77、島根)は17回目、3カ月間のブラジル公演を終え、4日に帰国した。その前日に当地の感想などを聞いた。
 世界各地を公演して歩く中でも「ブラジルは特別な場所だ」と強調する。「イタリアに何年も住みましたが、あちらでは先生と生徒はステージの上ではライバル関係。ここではすごく歓迎してもらえて全然違う。何といっても、こんなに日本語が通じる国は他にない」としみじみと語った。
 外国で公演を重ねると日本について質問される機会も多い。「的確に説明するためには、日本人自身がもっと日本文化や歴史を知らないといけないと痛感する」。
 日本の観客との違いを尋ねると、「日本ではまず歌手の経歴が見られる。お客さんもそう。ところが、ここでは『今惹きつけるものがあるか』が大事。一度聞いてもらって気に入ってもらえば、口コミで人が集まり、企画もトントン拍子に進む」。経歴より実力主義のようだ。
 「親子関係も違う」と感じるという。「日本では親は子に迷惑をかけまいとし、関係が希薄になってきている。でも、こちらの敬老会で呼ばれていった時、子が誇りをもって親を紹介してくれるのが珍しくない。子が親に敬意をもって自然に支える姿がここにはある」と感じ入ったという。
 96年に島根県人会40周年式典で来伯公演したのが最初。98年にブラジル人オペラ関係者との繋がりができてからほぼ毎年来伯する。「ここ数日、あちこちのブラジル人の合唱グループから送別会に毎日呼ばれている」。
 年齢を感じさせない闊達さが漂う。「一つの挑戦です。それに刺激を受けてくれる人がいれば嬉しい」とも。妻・宏子さんは「日本と同じ食生活をしていますから」と健康管理に内助の功を見せる。公道さんは「日本では体調を崩したこともあるが、おかげで、こちらでは不思議と病気をしたことがない」と笑った。
 帰国後はすぐに東京で仕事。来年も島根県人会式典やコチア青年60周年、イタリア系コミュニティからの依頼、亜国ブエノスアイレスなどの公演日程もすでに続々と入っている。