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漫画でブラジル教育改革?

 サンパウロ市ブルックリン区に開設したSBS語学学校で、梶原カチア・アウミール姉弟が漫画普及を図っている(本日付7面詳報)。二人とも日本語は話さないが、姉は8年も丹下節子太鼓道場に通い、弟は現在その代表を務める。〃日系人〃としてのアイデンティティを強く持つ二人の「仕事に日系人としての特色を出せないか」―との発想から始まった異例の事業だ▼というのも、ブラジルに40あるSBS支部のうち、漫画を扱うのは同支部のみ。漫画で日本語の読み書きまで覚えた二世は昔から多くいるし、何らかの形で取り入れている日本語学校も少なくない。それほど漫画の語学効果は日系社会ではお墨付きの方法だが、その効果のほどは伯社会では意外に知られていない▼実はその認知度すらも「Mangaという言葉を聞いたことがない青年も多い」(カチアさん)程度。梶原姉弟の取り組みを機に、「漫画を教科書に」とのアイデアが当地教育界にもっと広まってもいいし、最初から日語学習者用に描かれた初級、中級用の漫画があってもいい▼しかし広大なブラジル内にあっては、漫画情報の流通も日本に比べれば遅々たるもの。リ区の専門店やバンカでの販売が中心であり、実際に漫画を手にとってみることが出来る層が限られてしまうのが残念だ▼先月、中国共産党の機関紙が「ドラえもん」の政治的陰謀を疑うという、冗談とも本気ともつかないニュースを流したが、これこそ漫画の影響力を物語るエピソードの一つだろう。友情、信頼、忍耐―そんな日本の伝統精神が生きる漫画を各国の子供たちが愛するのは、こうした考え方に普遍性があるからだ。漫画を使った当地の価値観改革も悪くない?(阿)