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日本政府=ODA開始から60周年=JICAが記念セミナー=日伯協力の歩み振り返る

 日本がコロンボ・プランと呼ばれる国際機関に1954年に加盟し、政府開発援助(ODA)を開始してから今年で60周年を迎えた。ODAの実行機関「JICA」のブラジル事務所では、今後の協力の方向性を共有するため、1日にサンパウロ市でブラジル政府や日系社会関係者を招き、記念セミナーを行った。室澤智史所長、梅田邦夫・在伯日本国大使、マウリシオ・アントニオ・ロペス農牧研究公社(EMBRAPA)総裁、ジウマ・セリ・ペナサンパウロ州水道公社(SABESP)総裁ら約200人が出席した。

 ブラジルとの協力関係は1959年に開始し、主な事業にセラード開発、ウジミナス製鉄所、アグロフォレストリー農法の促進によるアマゾン環境保全などがある。
 梅田大使は「対ブラジル協力は資源開発型の官民を上げた事業で、互恵的な協力であることが特徴。日本の資金や技術でブラジルは発展し、日本は資源の輸入で助かっている。世界一離れているが、協力を通じて身近なパートナーになれた」と述べた。
 今後は「産業」「市民生活の安全」「環境」の3つを柱に、3年間で900人の訪日研修生の受け入れや交番の全伯展開の実施等を進めるという。
 ロペス総裁はJICAの協力を得て行なったセラード開発により、国土の23%にも及ぶ不毛の土地が農産物の一大生産地になった経緯を紹介。
 SABESPのジウマ総裁、エジソン・ジョゼ・ピンザン技術部長らは、JICAとの20年以上に及ぶ協力関係に言及し、チエテ川流域環境改善事業やサンパウロ州全域で行なう無収水対策工事等について説明した。これまで日本で研修を受けた同公社関係者は延べ160人にのぼるという。
 パネルディスカッション後、表彰式が行なわれ、室澤所長よりサンパウロ州警察交通警察のジウベルト・タルドッシ・ダ・シウバ司令官に記念プレートが送られた。また、全国工業職業訓練機関(SENAI)のラファエル・ルケージ総裁との間で、造船業に携わる人材育成事業に関する署名が交わされた。
 室澤所長は「JICAとブラジルにはとても強い信頼と友情の絆がある。それはこれからも続くでしょう」と語った。
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 コロンボ・プランに加盟した1954年から20年間で、日本は戦後復興を遂げ、74年にJICAが創設された。人材育成により相手国の自発性・自助努力を促す方法で、191カ国・地域を対象に教育、保険医療、経済政策、農業開発など様々な分野で支援を行なってきた。現在のODA実績(支出純額ベース)は、世界第5位の拠出国となっている。