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ブラジル式の〃正義の味方〃

 2日のペトロブラス両院議会調査委員会で証言するパウロ・ロベルト・コスタ(PRC)容疑者は、さながら〃正義の味方〃に見えた。減刑付き告白に踏み切って、洗いざらい連警にぶちまけた彼と、いまだに容疑を全面否定し続けるネストル・セルヴェロ容疑者―対極の存在が向かい合わせに座り、同じ件のはずなのに互いにまったく平行線、逆の証言をし続けた。某連邦議員は「どちらかがウソをついているようだ」と揶揄した▼かの国では、後世に残さない方が良いとされる重大事件の真相は「当事者が墓の中まで持って行く」のが美徳とされる。真実は本人と共に葬り去られ、限りなく真実に近い情報でも「推測」として歴史に刻まれる。でも、この国では機密が漏えいし始めるとキリがない▼同委員会でのPRCの表情は、心なしか憑き物が落ちた顔にみえた。彼は減刑付き告白に踏み切った理由を、「弁護士から薦められたからではない。家族が私にそうさせた。家族は問うた。どうして貴方だけなのだ? 他の人達は? 一人で罪を背負うの? 私の魂と家族への慰めのために告白に踏み切った」と滔々と述べた▼つまり「一人で墓に持っていく」のでなく「地獄へ行くなら道連れ」だ。当然、生命の危険も考えた上での決断だろう。「減刑付き告白」は犯罪者側には恐ろしい制度だ。先に告白した方が有利になる「裏切り奨励制度」だからだ▼PRCは決定的な捨て台詞を吐いた。「同じ汚職の仕組みは、道路、港湾工事、水力発電など全伯で蔓延している」。ウソで塗り固めるのが当たり前の国において、命がけの告白に踏み切った人物が言うと真実味は別格だ。(深)