東京とサンパウロを比較すると、お互いに新しい面が見えてくる。どちらも都会でビルが林立した世界的な大都市であり、国の経済の中心地。
ただ、本来ならば東京都と比較するのはサンパウロ州ということになるが、サンパウロ州は人口4404万人、面積も約25万㎢で桁違い。東京都が人口約1339万人で2188㎢、サンパウロ市が1132万人で1523㎢なのでサンパウロ市と比較するとちょうどよい。
関東地方の人口が4116万人、面積が約3万2424㎢なので、サンパウロ州は関東と同じ人口で、面積は10倍(本州と四国を足したぐらい)と考えていただくと、おおよその規模が推し量れると思う。
営業戦略でサンパウロ州から攻めますと言っても、日本全体の7割を攻めるようなものなので簡単ではない。やはり、まずはサンパウロ市からでないと移動も大変である。
次に交通インフラを比較すると、東京メトロが9路線/195.1キロ、都営地下鉄が4路線/109キロ、トータルで13路線約300キロ。
それに対してサンパウロの地下鉄は、現在5路線約78キロで東京の約4分の1。それにサンパウロ州鉄道公社(CPTM)が接続しており、それが6路線約260キロ。合計でようやく約338キロと東京を走る地下鉄全体と同じぐらいの距離になる。
東京はそれがほぼ23区内に存在しており、関東圏には当然それ以外の私鉄やJRがたくさん走っているわけだが、ブラジルはサンパウロ州全体に東京23区と同じ程度の路線しかないことになる。
今後モノレールなどを含めて、現在の約2倍の距離の建設計画があり、逆に言うとビジネスチャンスがたくさんあるとも言えるが、予算組みはしていても実施されるかどうかは政治家次第なのが難しいところだ。
圧倒的に少ない鉄道網をカバーするのはバス網である。至る所にバスが走っている。遠方に住んで、都心に通っている人は、一本のバスではたどり着けないので、バスを2本、3本と乗り継いで2時間ぐらいかけて通勤している人も少なくない。
しかも通勤時間帯はぎゅうぎゅう詰めであり、まさに痛勤地獄である。地下鉄も路線が少ないため、朝6時半からラッシュで、1回では乗れない。2、3本見送ってやっと乗れるが、日本の通勤電車と同じでおしくら饅頭状態で、スリも痴漢もいる。
では自家用車で通勤しようとすると、途端に渋滞にはまり、空いていれば15分のところが1時間かかる。おまけにプレートのナンバーによって乗れない日もある。
東京も通勤電車の混雑ぶりは同じだが、道路の渋滞は2、30年前と比べると、かなり緩和されている。高速道路がブラジルと比べれば整備されていることと、やはり鉄道、地下鉄が充実したためであろう。
今後サンパウロのみならず、ブラジル中で、鉄道、地下鉄、モノレールなどの交通機関の建設が計画をされているが、ハード面だけではなく、前述のような東京とサンパウロの違いを踏まえた上で、都市計画、交通計画などの観点から「サンパウロ市の痛勤地獄の解消」を提案できれば、大きな商機につながるだろう。