7日午後、サンパウロ市中央のメルカドンを訪れた買い物客は、予期せぬ〃贈り物〃を受け取った。買い物客で混む市場の中で突然、クリスマス(ナタール)・キャロルが湧き上がったのだ▼コンサートを行ったのはサンパウロ総合大学(USP)合唱団。買い物客を装って随所に散った団員達が一斉に歌い始めると、買い物客達も自然にそれに和す。サンパウロ市地下鉄でのクリスマス・キャロルの合唱は恒例行事だが、この手のコンサートは市民と歌い手の距離が近いのが嬉しい▼英国の文豪ディケンズの代表作品の一つに「クリスマス・キャロル」という小説がある。守銭奴で冷酷無慈悲のスクルージがクリスマス・イヴに共同経営者だったマーレイの亡霊の訪問を受け、「おまえが悲惨な結末を迎えぬよう、3人の精霊が遣わされる」と予告される▼精霊達に自分の過去と現在、未来を見せられたスクルージは、クリスマスの夜明けと共に悪夢のような未来を変える事が出来ると知り、マーレイと3人の精霊達に感謝と改心の誓いをたて、これまでと180度違う生活を始める▼寄付を求めて来たが追い返した紳士達には寄付を申し出、甥の家の夕食会に出向き、事務員の家にご馳走を届けさせると共に病気の息子を抱える家族への援助を行う▼事務員の息子の病気は治り、スクルージはこの子の「第2の父」とも呼ばれる存在となる。この作品のビデオにある、おぞましい未来の精霊の姿の後に出てくる、人々が歌い、踊る場面は我が家の子供達も大好きだった。経済的には厳しいブラジルだが、TVで流れたUSP合唱団の姿に、一人でも多くの人がクリスマスの喜びを味わえるよう、改めて願わされた。(み)