サンパウロの中心部パウリスタ大通りから約65km離れたところに、日系人も多く住むアチバイア市がある。緑に溢れ、気候も良く、非常に生活がしやすいと言われているが、近年企業誘致にも力を入れている。12月初旬に、その中心である『ブラジルビジネスパーク(以下BBP)』にお客様を案内した。アチバイアは、ほとんどの工場団地がサンパウロ市内から100kmから150kmである中で65kmと近く、かつ大消費地であるサンパウロ、ベロ・オリゾンテ、リオデジャネイロに向けて、ドン・ペドロ一世、フェルナン・ジアスの二本の高速道路が通っている。さらに、渋滞や事故、悪天候などによって、ブラジルの高速道路は往々にして動かなくなってしまうが、サンパウロへのルートも複数あり、ブラジルでビジネスを行う上での最重要課題の一つである交通・ロジスティクスの観点からも好立地と言える。
BBPは完全な民間企業で,ブラジル人のオーナーと投資ファンド2社が株主だが、60%の株を持つオーナーファミリーが事実上すべての経営を行っている。15年前にアチバイア市から始まり、今はとなりのジャリヌ市、さらにはイタチバ市、サンタバーバラ・ド・オエステ市へと各自治体および中央政府と緊密に連携をしながら拡大展開をしている。入居実績もボッシュ、サムソン、ネスレなどの国際的な大手企業とともに、現在日本からは唯一アステラス製薬がここに進出をしている。産業分野としては、自動車産業の集積地カンピーナスにも35kmと近いため、自動車関連が多いが、他に製薬、電子機器、化粧品、テキスタイル、食料品、そしてコールセンターと多岐にわたっている。
私もこれまで複数州で20箇所以上の工場用地を見たが、BBPの素晴らしいのはインフラ設備と管理マネジメントにある。昨今のサンパウロの水不足=電気供給への不安に対しては、66MVAという大容量の電力を確保するとともに、それを冗長化させて、万が一今使っている電気系統がダウンしても、すぐにバックアップする仕組みが出来ている。ちなみに開業以来一度もダウンしたことがないとのことであった。さらに、データセンター、セキュリティ、貸し会議室、IP電話、銀行ATM、旅行手配、レストラン、シャトルバスによる送迎、人材会社まで自社で抱え、入居企業のかゆいところに手が届くマネジメントを行っている。さらに驚いたのは、連邦政府の科学技術省がブラジルのビジネスパーク内としては唯一のイノベーションセンターをここに置いており、BBP入居企業の研究開発および商品開発をサポートしている。その分、入居費はサンパウロから100km超の場所に比べれば高いが、自前ですべてを用意することや、リスクマネジメントとして考えると今のブラジルとしては決して高いとは言えないのではないかと思う。その証左に、アチバイア市のビジネスパークはすでにいっぱいで、現在すぐ隣のジャリヌ市の約500万平方メートルの広大な土地に、『BBP・エスパッソ・ガイア』を建設中である。
BBPは基本的にはレンタル工場であるが、このジャリヌ市については、現在造成中の土地も多く、工場の設計段階から関わり、カスタマイズで建設をしてもらうことも可能であり、さらに将来その土地建物を買い取ることも出来るため、かなりフレキシブルな経営戦略を描ける。ちなみにジャリヌ市の方が税金を中心としたインセンティブはアチバイアに較べて篤いようだ。将来工場建設を予定している企業には一見の価値あり、だろう。