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第10回 1年の計(税)は前年末にあり。

 いよいよクリスマスシーズンとなり、今年も残りあとわずか。企業にとって日本は3月が年度末のところが多いが、ブラジルは一律で12月末までとなる。会計も今月で2014年度を締めなければならないが、同時に来年の計画を立てる、もしくは数字を予測しなければならない。ブラジルの場合は、法人所得税の申告方法が3種類あり、自分で選んで申告をすることになっている。来年1年間、どの方式で税務申告をするかを決める期限が1月末、要するに毎月申告をしなければならないので、来年の最初の申告時までとなる。
 3種類と言ったが、本当は弁護士事務所など特別な業種にだけに認められたスーパーシンプレスというのを入れると4種類になるが、ほとんどの会社の選択肢は、シンプレス・ナショナル、ルクロ・プレズミド、ルクロ・レアルの3種類。選択を謝るととんでもない税額を払わされ、2015年の決算に天と地の差が出る可能性もある。弊社も今年はルクロ・プレズミドを選んだが、今月年間トータルで計算をしてみると、ルクロ・レアルにしておけば約15%支払う税金が少なくて済んだので残念であった。この程度の誤差はブラジルでは許容範囲とせざるを得ないだろうが…。
 ブラジルの税金の計算は、やはり素人には極めて難しい。あまりにも種類とそれぞれの変数が多すぎて、予測がなかなか出来ない上に率や仕組みもよく変わるからだ。ルクロ・プレズミドは本来利益や経費がいくらかに関わらず、売上額(ノッタ・フィスカル発行額)の一定率を利益と想定して法人所得税や社会負担金を支払う。これも業種やケースによって変わって来るが、コンサルタント業の場合は売上げの32%を利益と仮定して計算される。これ以外にも、サービス業であればサービス税5%、製造業であれば工業品税(0〜20%)、流通・販売会社であれば州税として商品流通サービス税(州によって税率が違い、サンパウロの場合18%)、さらにはPIS/COFINSという社会負担金も売上げに対してかかる。この社会負担金もくせ者で、姿を変えて売上げにも利益にもかかってくる。
 ルクロ・プレズミドの良いところは、売上げの一定率を利益と想定してしまうために、実際に利益がどれぐらい出たかや経費を何に使ったかなどを毎月申告する必要がない。会計の手間も省け、税務署に細かくチェックされることもない。ルクロ・レアルは、もし実際に利益がなければ、所得税と利益にかかる社会負担金は払わなくてよいが、そのかわりに本当に利益が出ていないことを証明するために、月次で会計申告をしなければならず、税務署から細かく指摘を受ける可能性もある。どちらにするかの判断は、コストや手間を含めてかなりシミュレーションをする必要があり、今年のうちに来年の計を練るのがベターであろう。その際に一点要注意。現在巷間をにぎわしているブラジル政財界の数々の汚職において、取引内容を隠せるルクロ・プレズミドが重用されたせいか、来年からルクロ・プレズミドも毎月の会計申告が必要になるらしい。まったく迷惑千万な話である。

[su_service title=”輿石信男 Nobuo Koshiishi” icon=”icon: pencil” icon_color=”#2980B9″ size=”28″] 株式会社クォンタム 代表取締役。株式会社クォンタムは1991年より20年以上にわたり、日本・ブラジル間のマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ、各種認証取得支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。  2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。[/su_service]