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「チム・マイア」特番で物議=突如変わった「王」の描き方

 グローボ局は今年で開局50周年を迎えるが、その記念番組の一環として、1月1、2日の2夜に分けて、ブラジルが生んだ名黒人歌手の伝記ドラマ「チム・マイア~ヴァーレ・オ・キ・ヴィエール」を放送したが、この内容が物議を醸している。
 このドラマは、昨年の10月に劇場公開された映画「チム・マイア」を元にし、同映画で描かれなかったシーンを足したニュー・ヴァージョンとして新たに製作されたことで話題を呼び、視聴率も上々の成績だった。
 だが、このドラマ版をめぐって方々で非難の声があがっているのだ。
 その最大の問題は、同ドラマでの「ブラジル音楽界の王」、ロベルト・カルロスの描かれ方だ。
 ロベルトは1950年代、ヴォーカル・グループ「スプートニクス」のリード・シンガーで、そこにチムが新入りとして入って来た。この関係上、ロベルトはチムを格下と見なしていたとされている。
 映画版や、映画の脚本の元となった伝記本「チム・マイア~ヴァーレ・トゥード」では、60年代以降、国民的歌手として成功していたロベルトに対し、歌手として成功を求めるチムが、ロベルトの楽屋や出演するテレビ番組のスタジオまで押しかけて「自分にチャンスを」と頼みこむシーンが描かれているが、それに対しロベルトはチムのことをほとんど無視し、彼自身の古い衣装のブーツや、しわくちゃになった札束を渡して追い返すシーンが描かれていた。
 ところがドラマ版ではこのシーンがカットされ、チムの伝記作家のネルソン・モッタとロベルト・カルロス本人が現在からの証言を行うシーンが描かれた。そこでモッタは、ロベルトがチムにレコード会社を紹介するなどして彼のキャリアを助けたことを賞賛し、ロベルトは「チムを手伝ったのは、最初は僕の意思ではなく、〃彼を助けてあげて〃と頼んだ(当時の)妻の影響が大きかったんだ」と語っている。
 ただ、こうしたいきさつは伝記では描かれていなかったことから、映画版の監督をつとめたマウロ・リマは「今回のドラマ版は私の意図した作品とはまるで違うものになっている。お願いだから見ないでくれ」とネット上で苦情を申し立てた。
 そして放送終了後、チムの実子であるレオ・マイアも「数えたら18カ所も事実と違うことがある」と、ネットで不満を表明している。
 ロベルト・カルロスは、自身の伝記本に関しても発売の取り下げを求めた過去があり、2013年にはカエターノ・ヴェローゾやシコ・ブアルキと共に伝記の肖像権を求める運動も起こしているが、「歌手による検閲行為だ」との批判を世論から受け、彼自身が同運動から真っ先に手を引いたこともあった。「4日付ドウラードスニュースより」