2015年のブラジル工業界は、自動車メーカーのフォルクスワーゲンとメルセデスが早々に約1000人を解雇するなど、雇用に不安を抱えた状態で始まったと12日付エスタード紙が報じた。
ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)が昨年12月に企業約1千社を対象に行った調査によると、2月までに従業員を解雇する予定の会社は4社に1社で、同期間中に新規採用を考えている会社の2倍だった。
「第1四半期の工業界の雇用状況はあまり望ましいものとはいえない」というのはFGVのスーパーヴァイザーで、今回調査の責任者のアロイジオ・カンペロ氏だ。
12~2月の雇用指数は89・2で、2008年に起きた国際的な金融危機の影響が色濃い2009年3月の調査で得た85・5とほぼ同じだ。この指数が100を切ると解雇する意向の会社が採用を考える会社より多く、販売低迷による業績悪化を人員整理や時短などでカバーせざるを得ない企業が相当数ある事がうかがわれる。
カンペロ氏によると、ブラジルの工業生産は2011年以降、減少傾向にあり、ここ8カ月間は雇用に関する見通しが悪化する一方だという。生産の悪化は地理統計院(IBGE)の数字でも表れており、14年1~11月の工業生産は前年同期比3・2%の落ち込みを記録している。
第1四半期に解雇を考えている企業は全部門に及び、輸送部門や繊維、非金属鉱業、医薬・獣医薬品、電気・通信、食品の6分野は特に顕著だ。
9日付エスタード紙によると、自動車関係は2014年も、12月の1600人など計1万2400人を解雇しており、今年も既にワーゲンとメルセデスが約1千人の解雇を発表。12日朝も、サンパウロ州ABC地区の金属労協の組合員らが解雇の見直しを求めて大規模なデモを行った。
過剰在庫が際立つのは自動車業界と繊維業界で、集団休暇やレイオフによる生産調整で多少は在庫が減ったが、今も高い水準にある。その他の部門でも需要が落ちて生産低下が起きている。
マナウスの工業地帯でも雇用状況は深刻で、昨年9~11月には7千人が解雇された。PhilcoとLenovoは、生産ラインの減産や工場の移転で1500人と2100人を解雇した。
アマゾナス州工業センターのウイルソン・ペリコ氏によると、同州の工業生産は前年比4~5%減で終わったという。ペリコ氏は第2期ジウマ政権の経済政策がどの程度の規模の調整を行うかが不明確である事などが、消費や雇用の見通しにも悪影響をもたらしているとしており、数週間の内に新たな徴税などの経済政策の全貌が明らかにされる事を望んでいる。