【既報関連】フォルクスワーゲン(VW)が16日朝、6日に解雇した大サンパウロ市圏サンベルナルド・ド・カンポ(SBC)のアンシエッタ工場従業員800人の解雇を撤回、これを受け、従業員組合も無期限ストの停止と19日からの職場復帰を決めたと16日付各紙サイトが報じた。
ABC地区の金属労協によると、VW従業員ら約8千人は同日朝総会を開き、労使交渉によってまとまった合意書の内容を全会一致で承認した。承認された内容は、12月2日に組合側が拒否したものと似ているが、最大の違いは、拒否された案では特別手当を支給する代わり、2015年と2016年の給与を凍結するとなっていたが、16年はインフレに準じた調整を行うと変更された事だ。
会社側は、経費と生産性の適正化を図る事が出来る合意が成立したとし、継続して希望退職者を募る事を前提に、800人の解雇を撤回した。
アンシエッタ工場は1959年創業で、現在の従業員は約1万3千人。本国のドイツ以外では最も古いVWの工場だが、近年は生産性の向上が課題となっている。
SBCは自動車工場が多い地区だが、VWは同社の給与は他社の平均より高いという。自動車産業は、14年の販売が前年比7・15%減など、深刻な状況で、同地区ではメルセデス・ベンツも7日に244人を解雇し、VW同様の抗議行動が発生した。
ブラジル経済の牽引車だった自動車産業の不振は、工業界全体の縮図でもあり、16日付フォーリャ紙は、14年1~11月の工業界は2009年以降で最大幅の雇用減となったとも報じている。
昨年11月までの工業界の雇用は、2月、3月に0・1%と0・2%の増加を見た後、8カ月連続で0・4~0・8%減少。11月は前月比で0・4%、前年同月比で4・7%減少した。前年同月比での減少は38カ月連続で、近年のブラジル工業界の現状を物語る。1~11月の雇用は前年同期比3・1%減で、09年の5%減に次ぐ落ち込みとなった。
工業界では、経済基本金利引き上げや融資枠縮小、消費者の購買力低下による販売不振や在庫増で生産調整が必要な分野が多く、集団休暇やレイオフも頻発。1~11月の工業生産は前年同期比3・2%減で、09年の7・1%に次ぐ大幅減となった。雇用縮小や所得低下は更なる生産調整や就労時間減などの悪循環も招いており、残業も含む就労時間は7カ月連続で減っている。生産が回復してきた場合、残業などの形の就労時間の増加の後に新規採用が起きるのが常道だから、2015年の雇用も当面は厳しい状況が続く見込みだ。