昨年のサッカー全国選手権(ブラジレイロン)を制したクルゼイロ所属で、最優秀選手にも選ばれたミッドフィールダー、エーヴェルトン・リベイロ(25)の移籍先が24日に決まったが、この結論に疑問を唱える声があがっている。
エーヴェルトンは13年からクルゼイロに加入し、チームの司令塔としてブラジレイロン2連覇に貢献。昨年後半にはセレソンにも選ばれ、好プレーを見せて好評を得ていた。
ヨーロッパの強豪が獲得を狙っているとの報道もなされていたが、移籍先は意外にもアラビア・リーグのアル・アハリとなった。
今回のエーヴェルトン獲得に関しては、イタリアの名門ACミランも名乗りをあげていた。だが、ミランが契約金3千万レアルでの完全譲渡を求めたのに対し、アル・アハリは2700万レアルの契約金ながら保有権の40%をクルゼイロ側が持つという条件で合意に至った。
クルゼイロは昨年のブラジレイロンで圧倒的な強さを見せて優勝し、昨年ベスト8止まりだったリベルタドーレス杯での優勝を狙っているが、その矢先のエースの移籍だ。
だが、このタイミングで移籍するのは彼だけではない。エーヴェルトンと攻撃の軸となり、セレソンにも選ばれていたリカルド・グラールは中国リーグの広州恒大に、ボランチのルーカス・シウヴァはレアル・マドリッドに移籍する。
ここで注目されるのは、リオ五輪世代の21歳のルーカスが昨年世界一のレアルに移籍するのは理解できるものの、セレソンにまで選ばれるエーヴェルトンやグラールがなぜアラブや中国といった、レベルが高いとは言えないリーグに移籍するのか、ということだ。
実は同じことは、クルゼイロのお膝元、ベロ・オリゾンテのライバル、アトレチコ・ミネイロでも起きた。Aミネイロは、エースでセレソンのフォワードのレギュラー、ジエゴ・タルデッリを中国の山東魯能に移籍させている。
経済状況の良い中国や、王族がスポンサーのアラブはたしかに金銭面では良いかもしれない。だが、リーグの注目度は一般的に、かなり低い。リーグそのもののレベルも低く、強豪がひしめく欧州と比べて試合のレベルも下がる。実戦の勘がずれて、セレソン選出にもマイナスにもなりかねない。
こうした選手たちを、経営を重視するために金銭優先で移籍させるクラブの方針にはファンから疑問の声があがっており、ネット上では「アジアがブラジル・サッカーをつぶしている」「エーヴェルトンたちはセレソンはアウトだな」の声などが目立っている。
もっとも、似たような状況は90年代にもあった。94年、98年のW杯には、現セレソン監督のドゥンガをはじめ、エメルソン、セーザル・サンパイオなど、選手として油が乗っている時期にJリーグに渡った選手がしっかりセレソンに選ばれているので、要は本人次第なのかもしれないが。特にジュビロ磐田在籍時にW杯に出場したドゥンガなら、そう判断するかもしれない。