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正直者女性に思わぬ幸運=拾ったお金が次の職業に

 イソップ童話の「金の斧」に象徴されるように、正直な行いをした人が神様に報われるという教訓は世界的に存在するが、つい先日、サンパウロ州バレットス市でそれを現実のものとした女性がいる。
 アナ・マウリシア・ドス・サントスさん(23)はサンパウロ州バレットスで、再生資源ごみを回収という低賃金の重労働で生計を立てている。月給は850レアルで、ブラジルの所得を5段階に分けた際に最下位となるEクラスの所得だ。彼女の夫は2年前に麻薬の密売人として逮捕され、刑務所で服役中のため、3歳となる息子のマウリシオ君と共に実家に身を寄せ、男性でもきつい仕事を1日10時間もこなしている。
 そんなアナさんは1月22日朝、バレットス癌センターでダンボールを回収中、透明な袋に入った手帳と封筒を見つけた。封筒の中には癌センター宛の寄付用の小切手(額面25万レアル)が入っていた。
 それはアナさんの月給の300倍にも相当する大金で、出来心で自分のものにしようと思えば出来ないこともなかった。だが、アナさんは同日中に癌センターに連絡をとり、翌23日に院長に直接手渡した。
 この行為に大喜びした院長のエンリケ・プラッタ氏は、「あなたの都合の良い時期から、私どもの病院で働いてもいい」と言ったという。
 現時点で、同病院とアナさんの雇用が成立したという話は入っていないが、この美談はブラジルの大手マスコミでも流れ、市民がサインを求めるなど、一般からの注目度も高いため、口約束で終わることはなさそうだ。
 同癌センターは癌治療では国内でも有数の医療機関で、同センターで勤務することになれば、待遇の改善も期待できる。
 アナさんは4カ月前からはじめた回収の仕事を振り返り、「男性がするべき重労働なのに稼ぎは少なく、家を借りることもままならない」と語っている。
 この人生転機のチャンスを得たアナさんは、これをきっかけに暮らし向きが好転するのを望み、夫が出所後に職を探すのも手伝いたいと語っている。可能ならば、自分たちの家を持つという夢を実現して市周辺部の辺鄙な地区を離れ、学校にも通いたいと語るアナさんは、幼い頃から家計を助けるために働き、高校も中退したが、「医師か看護婦になることも昔からの夢だった」という。
 これらの夢が実現するかはわからないが、正直な行為をキッカケに、家族とともに新しい人生を生きる夢と希望を持つ契機となったことは大きいと言えるだろう。(29日付G1サイトより)