ブラジルのビジネスを難しくしている要素の一つとして「不動産」がある。賃貸も売買も落とし穴がいっぱいだ。ブラジルも一応資本主義国なので、中国のようにすべてが借地で、政府が一方的に突然立ち退きを迫り、ほとんど賠償もしないということはないが、別の意味で似たようなことが起こる。
特に店舗などは、一度お金をかけて内装をし、その場所でお客さんが増えてくると、そう簡単に移転ができないわけで、それを見透かして契約更新時に平気で家賃を倍や3倍にする話は至る所で聞く。
また、もっと高く借りてくれる人が出てくると、更新時に一方的に追い出され、繁盛していたのに突然移転せざるを得ない場合もある。ある意味、中国の強制退去と同じである。
先進国の感覚からすれば、最初の契約で縛れば問題ないのではないかと考えるようだが、1年先がどうなるかもよくわからないブラジルで、更新後のことまで契約書で約束をしてくれる篤実な人はいない。
オフィスの家賃も、多くはジェトゥリオ・ヴァルガス財団がインフレ率をもとに計算し、毎年発表するIGP―Mという指数をもとに契約時から毎年上がっていく。リーマンショック後は借りる方が強く、契約更新時にはまず値下げの交渉をする日本とは逆だ。
2013年後半から2014年のブラジル経済はかなり悪く、不景気であったにも関わらず、家賃相場は下がるどころか上がっている。さらに不思議なのは、明らかに長期に空いているのに、非常に高い賃料を設定して、交渉しても簡単に下げないことだ。
本格的にブラジルでビジネスをする場合は、早い段階で不動産を購入して、それらの不安やリスクを払拭することも検討が必要だ。
次に、気に入った物件があっても、実際に借りるまでがひと苦労だ。家賃を踏み倒したり、途中で払えなくなる人が過去に多かったためか、借りたいという人が来ても簡単に貸さない。ありとあらゆる個人情報を出させられた上に、保証人か保険会社の保証が必要となる。さらに、その保証人に対しても、所得・貯蓄・資産などのあらゆる個人情報の提出を要求する。
とても申し訳なくて、友人などに気軽に頼めないため、ほとんどの場合は保険会社を使うことになるが、今度は保険会社からの審査がまた大変。こうして、なかなか借り手が決まらない物件がたくさんある。
さらにオフィスの物件を決める際には、都市不動産所有税(IPTU)にも要注意である。区画によっては、オフィスビルであっても、物品の売買が出来ない場所もある。立地が良くてビルがきれいだからという理由だけで選んでしまうと、いざ契約が済んで、内装をしながら輸出入業者登録(RADAR)や州税の登録をしようとしたら、そのビルでは出来ないという場合もある。契約前にIPTUの種類の確認が必要だ。
また、新築物件は魅力的だがIPTUの登録がまだ済んでなかったりする。そうするとやはり各種登録ができず、役所の処理も都市部は遅いので、オーナーが怠慢な場合、下手したら1年待つということにもなりかねない。ブラジルの不動産は本当に危険がいっぱいである。