6日夜(日本時間では7日朝)のNHKの番組で、「幸運のタクシー」と呼ばれる名物タクシーの事を取り上げていた。運転手の川口政則さんは流しにこだわり、無線もなければ携帯電話も持たない。彼のタクシーに乗る事が出来ればそれだけで幸運だという▼川口さんは乗客の生まれた年に合わせ、各々の青春時代の音楽を用意。好みの音楽を即座にかけてくれるだけでなく、世界中の言葉で「ありがとう」と言える。インターネット報道によれば、各大陸にある国名、歴代天皇や歴代首相の名前も瞬時に言ってのけるとか▼そんな独特の〃サービス〃をする理由を、川口さんは「お客様を楽しませるのが幸せなんです。タクシー運転手になって50数年、ずっとそんなことを考えながらやってきたから、覚えることは空気を吸うのと一緒くらい当たり前にできますよ」と言う。その人柄や楽しい乗車時間に、大勢の乗客がメッセージを残していく▼この話を聞き、心の底から運転手も乗客もうらやましく思った。自分の仕事に誇りを持ち、乗客を楽しませる事で自分が幸福感を味わうだけでなく、乗客にも至上の思いを抱かせるとは。乗客の中には、川口さんから得た助言で人生の方向を見出したりした人達もいるという▼昔読んで感動し、今も手元に取ってある切抜きに「幸せ売り」という話がある。「幸せ売りはいつでも人をまぶしげに見つめ、後姿からでもまぶしい笑顔だけが浮かぶ人で、幸せを振りまいているうちにある時突然、知らない人からお礼のお辞儀などをもらう」とある。こんな人が本当にいるのなら、自分も是非あやかりたいと思うのは無理な望みか。(み)