止まらぬ賃料の上昇に対抗して、店内を可能な限り小規模にしてコストを下げる。近年のサンパウロではそんな、オーナーの財布にもお客の財布にも優しい小規模飲食店が勢いを増している。
小さいことそのものがお店のヒットの条件ではない。大成功は、かえって小規模店には障害になることもある。
オープン時には店の奥行きよりはるかに長い行列ができてしまうこともあるし、小規模のために客が注文する頃には材料のストックがなくなってしまうこともあるが、堅苦しいことは抜きにして、隣のお客と体を寄せ合い、料理を楽しむ。それが小規模レストランを満喫する秘訣だ。
ピニェイロス区の「アンダードッグ」を満員にするのにはそう多くの客を必要としない。テーブルは路上に置かれた八つだけ。冷蔵庫も大きくないので品切れもしばしばだ。
小規模レストランでは、伝統レストランの給仕のような大仰な挨拶など期待してはいけない。ここではお客もオーナーもコックも同じ空気を共有している。
「小さなレストランだからこそ、愛されるお店のキャラクターを大事にしていかないと」と語るのはジャルジン・パウリスタ区のサンドウィッチ店「Z‐Deli」ジュリオ・ロウ氏は語る。
ピニェイロス区の「Maiz」は、ラテンアメリカの路上の屋台食を出している。店内に16席、路上にもベンチがあるだけの店だが、1カ月に延べ2千人の来客があり、行列は驚異的だ。
小規模レストランでは、空間の使い方や動き方、導線にもミリ単位でこだわらなくてはいけない。1センチの余分が全てを台無しにしかねないからだ。
小規模レストランの経営は、狭くしてより効率を上げるゲームだが、狭すぎてもいけない。(26日付け、エスタード紙より)