85人の死者を出した爆破事件で国際手配されたテロリストを逮捕しない代わり、自国に都合の良い条件での貿易合意を取り付けたとして、亜国のクリスチーナ大統領達を告発したアルベルト・ニスマン検察官が、国会での証言前夜の1月18日夜、遺体で発見されたと聞いた時、2面記者達はきな臭さを感じた▼だが、その後の捜査は自殺という線で進み、胸のつかえに似たものを感じていた中、今月5日、遺族が頼んだ検視官がニスマン氏他殺説を唱えたとのニュースが流れた。同国の検視官や鑑識官の多くを指導した人物による報告書が他殺と結論付けたのだ。7日付伯字紙は、担当検察官が6日、「こんなに差がある検視報告書を見た事がない」と発言し、検視官同士を対面させてその差を説明させる意向との記事を掲載した▼新しい報告書は、ニスマン氏は浴室で跪いた状態で頭に銃を突きつけられて撃たれ、死ぬ前に苦しんだ事や、遺体が動かされた事などを明記しているという。最初の報告書が被害者は即死、遺体は動かされた形跡はないとした記述が悉く覆される内容に、改めて作為を感じる。同じ事件、同じ現場、同じ遺体を見て作られた報告にかくも大きな差が生じるはずはないからだ▼最初の報告書との差がなぜ生じたのかは知らない。だが、検視官達がその職務や目の前にある遺体、物証などに真摯に向き合い、自分の仕事に誇りを持っているならば、かくも大きな〃ミス〃は起きえまい。新聞の報道も然り。第三者が書いた記事が土台となる翻訳記者は、複数媒体にあたってミスを回避するしかないが、権力などに屈する事や良心を売るような事だけはしたくないと改めて思う。(み)