15日には全伯で200万人もがデモに参加し、92年コーロル弾劾デモ以来の参加者を各地で記録した。この反PT、反ジウマ抗議行動の頂点は、なんといってもサンパウロ市のパウリスタ大通り周辺だった。その中には、普段は抗議活動にはあまり積極でない日系人の姿も珍しく多くみられ、現政権下の汚職や増税に対する不満が広い層で共有されていることが伺われた。
開始時間の午後3時には10数分間、雨も降ったが、どんどんメトロからは人が吐き出され、裏通りまで人でいっぱい、身動きができない状態になった。ダッタ・フォリャは21万人が大通りでのデモに参加と算出し、軍警は周辺部も合わせて100万人が参加したと発表した。
メトロの車両内からデモは始まっており、壁や天井を叩きながら「我々の旗は二度と赤にしない!」「ジウマ辞めろ!」から始まり、「ジウマは盗賊、お前は最低だ」などと聞くに堪えない大統領嫌悪の罵声までも繰り返し連呼され、ブラジル国歌や「ブラジル人の誇り」の唄が何度も大合唱された。
パウリスタ大通りは見渡すかぎり、黄色と緑色のTシャツを着て、ブラジル国旗やプラカードを手にした老若男女、家族づれの群集でいっぱい。
サンパウロ美術館(MASP)横を中心に街宣車があちこちに停車し、その周辺に集まった群衆に、現政権への批判を繰り返した。
同美術館前で「ジウマ辞めろ」という横断幕を支えていた新垣クレーベルさん(32、三世)に参加理由を尋ねると、「(今の政治に対する)反抗だよ。メンサロン、ペトロロン、もう汚職はいらない」とひと言。
「僕は2年間、山梨県にデカセギにいった。日本は素晴らしい。ブラジルを日本の様にするためにこのデモに参加したんだ。そのために僕らが立ち上がらないといけない」と語気を強めた。
「初めてデモに参加した」という藤崎和夫さん(52、三世)は、「政治家は汚職をして盗み過ぎだし、大統領は見てみないふりをしている。本来は公共教育や医療に使うべき我々の税金が無駄になっている」と理路整然と語った。
すぐ隣にいる妻・幸江さん(50、同)も「これ以上許さないという態度を国民が見せないといない。今日ばかりは、普段デモに参加しない日系人もあちこちにいるわよ」と人であふれかえる大通りを見渡した。
■ひとマチ点描■今日は「ブラジル変える記念日」
シルビオ・サノさん(64、二世)はフェイスブックで多くに友人や日系政治家にもデモ参加を呼びかけた。妻・和枝さんと共に自ら日本の国旗をもって早々に赴き、現場から多くの写真をサイトに投稿し、「今日はブラジルを変えるための記念すべき日だ」と書いた。
「雨が降り始めてもひるむものもなく、『ブラジルを変える』ために、むしろ気合を入れなおしているようだった。とても感動的なデモだった。次回にはもっと多くの日系人に参加してほしい」と呼びかけた。(深)
【大耳小耳】
先週金曜の政府寄りデモでは、〃昼食代〃として組合から35レアルとか50レアルを受け取って参加していた組合員がいたことも報道されたとこから、「俺はタダで来た!」と群集の連呼もあちこちでこだましていた。政党のシャツを来たものはほとんどおらず、ロナウドら有名人は歓迎されたが、パウリーニョ・ダ・フォルサら政治家が車上にあがると、ブーイングが広がった。政治家に対する深い不信が感じられる大抗議行動となった。