「ア・セマナ・インテーラ・フィケイ・エスペランド・パラ・チ・ベル・コリンチャンス」(コリンチャンス、お前を見るために1週間も待ったぞ)と定番の応援歌を歌いながら、考え込んでしまった。「選手達は、1週間も休んだことなどないじゃないか」
サンパウロ州選手権で、コリンチャンスが3月22・24・26日と1日おきに3試合戦うという、日本の高校サッカー顔負けのスケジュールが出現した。それだけではない。セレソンにジウとエリーアスの2人が招集され、戦力がさらに薄くなり、22・24日と連続フル出場する選手まで現われた。
ブラジルのサッカー国内リーグは、世界一の過密日程となっている。その理由は、全国選手権にコパ・ド・ブラジルといった国内大会と、リベルタドーレス杯などの国際大会の他、州選手権までやっているからだ。
サンパウロ州の場合、20チームで争うサンパウロ州選手権が予選リーグ15節、決勝まで勝ち進むとさらに4試合で19試合、それから全国選手権が38節、合間合間のコパ・ド・ブラジル、クラブチームの国際試合もあわせると、一年にこなす試合数と移動距離は膨大なものになる。
鹿島アントラーズがJリーグの前に茨城県選手権を戦うだろうか。本田のACミランがセリエAの前にロンバルディア州選手権を戦うだろうか。香川のドルトムントがヴェストファーレン州選手権を戦うという話も寡聞にして聞かない。
動きの激しいサッカーは、本来は週1試合が望ましい。コリンチャンスは2月1日から3月半ばまで、7週続けて週2試合というスケジュールが続いており、サンパウロ州選手権、リベルタドーレス杯を勝ち進むと、5月初旬まで丸3カ月これが続く。
6月にチリで開かれるコパ・アメリカ中も全国選手権は休みにならず、各チームは「強力な選手をそろえてチーム力を増強、ただし、強力すぎて代表チームに召集されてしまうと逆に戦力ダウン」という矛盾に苦しむことになる。日程に余裕のある他国では代表戦、ましてやタイトルのかかったコパ・アメリカのときは国内リーグは休みだ。
ブラジルは国土が広大で、チームの移動に多大なコストがかかっていた時代もあるため、州選手権(リオ州は1906年、サンパウロ州は1902年以来)の方が全国選手権(1959年以来)よりずっと長い伝統をもっている。また末端まで含めたチーム数が膨大で、それらのチームに戦う場所を与える意味で、早急な州選手権の廃止は現実的ではない。
では、悲鳴を上げる選手の身体はどうなるのだろう。「たまには選手達に1週間休みやれよ、こっちの財布ももたないよ」と中1日の3連戦を観戦しながらため息をついた。(規)