景気の先行き不安とインフレによる購買力の低下が、毎日の食卓にも現れ始めた。
国内総生産(GDP)の伸びが振るわず、自動車業界の在庫が増えているといった報道は昨年からあり、1、2月には失業率も上昇するなど、国民の中には景気の先行きに対する不安や解雇への懸念が広がっている。
雇用不安は長期ローンに手を出す事に二の足を踏ませるため、家屋や車の販売が落ち込み、建設業界や自動車業界の業績不振を招くという悪循環も起きているが、3月には12カ月間の累積インフレ率が8%を超える事態も発生し、購買力の低下に拍車をかけた。
3月の場合、電力料金の値上がりがインフレ圧力の半分以上を占めていたが、もう一つ値上がりしたのが食料品で、食料品の販売量低下にも繋がっている。
小売店での実績を2014年12月~15年2月の数字で見てみると、バンやスパゲティなどの小麦製品から魚の缶詰、砂糖などに至るまでの庶民の食卓に上る食品の販売量は平均0・1%低下した。この時期は通常、食料品の消費が増える時期で、昨年同期の販売量は前年同期比で5・9%伸びたが、今年はインフレ上昇分を差し引いた食品価格が2・6%下がったのにも関わらず、消費量が落ち、小売店には大きな誤算となった。同期間中に消費量が増えたのは、粉末タイプの調味料の7・5%やトマトソースの8・6%、マヨネーズの3・9%などだが、昨年の伸び率を上回ったのは、昨年は0・4%の伸びに止まっていた粉末調味料だけだ。
夏場故に消費が伸びたのはビールの2・7%増のみで、アイスクリームや炭酸飲料は売り上げが低下。ビールの場合も、昨年実績の12・4%を大幅に下回った。
消費減退で小売店の仕入れ量が減り、注文も15日単位になったため、3月の食品業界では小麦製品や乳製品、牛肉や砂糖を中心に過剰在庫の問題も起きた。消費減退の影響は中流階級のシンボルと言われたヨーグルトの販売量にも現れており、先行き不安や購買力の低下がCクラスにも及んでいる事がわかる。
サンパウロ州での調査によると、電気料金などの公共料金と食料品の値上がりは国民の78%に何らかの影響を与えており、食費を削ると答えた消費者も31%いた。
全国スーパーマーケット協会(Abras)は今年の売り上げは2%増と見込んでいたが、現在は目標達成は困難との見方が広がっている。サンパウロ州スーパーマーケット協会(Apas)では今年の売り上げは横ばいと見ている。同協会のエコノミスト、ロドリゴ・マリアノ氏は、「GDPが縮小すると予想される中での現状維持は決して悪くないが、懸念すべき事態だ」との見解を表明している。(12日付エスタード紙より)