腕に自信のないやつでも少なくとも二組のボーラを携えていたが、大抵は三組用意していたし、五組も持っているやつもいた。一組は手に持ち、残りは腰にぶら下げていた。
これらのボーラはすべて小さい石を使っていて、実に旨くできていた。というのも、知っての通り、馬というのは牛に比べて骨がうんと細いからだ。それで、重いボーラが当ると、当り場所によっては傷物になってしまう。
そうなんだ。ボーラの三つの玉はしっかりと革張りされていて、それぞれ柔らかい(怪我をさせないためだ)革の紐で一束に繋いである。それからリガーというやつを何本か持っていく。
お前さんはリガーが何だか知らないだろうな。鞍の敷き皮にしたり積荷が雨に濡れないための被いにする子牛の生皮のことだが、それだけじゃない。1メートルくらいの帯状に切って、片方の先に穴を開け、反対側の先は尖らせてある。これもリガーというんだ。締め皮とでも言うのかな。
ボーラが当って馬が倒れると、男達は近寄って、馬の膝腱(ひざけん)の上の方にそいつを回して締め付け、動けないようにする。昔からのやり方で、例えは悪いが、女の靴下止めで締め付けるようなものさ!
分っただろう、な、お前さん!
膝腱を締め上げたあと、牧夫はボーラを解き、印をつける。すると、馬はすっと体をもたげ、立ち上がる。怒りっぽく足を踏み鳴らし、荒い息を吐きながら……そして、驚くなかれ、だ。信じられないだろうが、馬は三本足で歩き出すんだ! こうやって、ボーラを投げるたびに二頭、三頭、八頭と取り押さえられる。だが、馬たちはもう駆け出すこともできず、草原の中で足をバタバタさせてもがいているだけだ。
そこで、ガキども――牧場で下働きをしている混血の少年たちだが――が、こうした馬を集める。後でそれぞれの印に従って、主人たちに分けていくという訳だ。
雌馬追いをしながら、ガウショは自分の気に入った馬をボーラで捉まえていった。時には一頭の馬を同時に二人が倒すことがあるが、先にボーラを当てた者がその主になるといった具合だ。
だが、何と駄馬が多かったことか!……見事なうなじの仔馬が縄にかかったと近寄ってみると、歯がグラグラの老いぼれだったり……、バトビの丘の景色みたいに年ばかり喰っていたり……、役に立たなくなって捨てられた乗馬用の馬だったり……、ひねくれもので言うことを聞かなかったり、鞍ずれがあったりで……、その他にも……とにかく、さんざん苦労して捉まえてみたら、どうにもならない代物だったりが何と多かったことか!
まあ、話をもとに戻すと、馬にまたがりいざ出発というとき、牧場主か代理の親方がわし等を三人一組に分けて、あっちこっちと遠くの方まで配置を決めて、追い詰められるようにした。
やがて、男たちの馬追いの叫びが上った。野生馬はその動きに驚いて、いななきながら集まって群れを作り始めた。そして、警戒してしきりに空気を嗅ぎ、疑い深そうに体を寄せ合っていた。他の群れは尾を高く揚げ、鼻息荒く、踊るように足をバタバタさせていた。しかし、すぐぐるぐると円を描いて走り出し、草原の彼方へと消えていった。
向こうの方のあちこちで同じような騒ぎが始まっていた。樹木や沢に挟まれた牧草地でも、丘の斜面の上りでも、小さな谷あいの下り坂でも、小川に沿った疎林でも雌馬の群れが出会い、互いに混ざり合った。
牧夫たちは背後から迫り、彼らの叫び、犬の吠え声、さらに銃声で、各々の馬の群れを追った。全ての方角から、互いに交差しながら、すでに申し合わせてあった通りに動いた。雌馬の群れは次第に数を増し、膨れ上がり、渦を描き、動きが乱れ、絡み合った……そして、突然、頭をもたげ、空を蹴って地面を揺るがせると、落雷のような音をとどろかせながら走り出した。(つづく)