昨年後半から、ラヴァ・ジャット作戦(LJ)でペトロブラス(PB)絡みの大型汚職〃ペトロロン〃摘発後、造船業界に深刻な影響が広がった事は、14年8月の安倍総理来訪時の共同声明に〃造船業界発展のための協力〃も盛り込まれたのに逆行する。
日本企業も参与するアトランチコ・スル造船(EAS)や大河造船(ERG)、エンセアダ造船工業(以下、エンセアダ)などが窮状に陥った最大の理由は、PBの石油採掘船建造目的で創設されたセッテ・ブラジル(以下、セッテ)からの支払いが昨年11月以降滞っている事だ。セッテは、同社元理事でPBサービス部元課長のペドロ・バルスコ被告の報奨付の供述開始後、長期融資が得られず、PBからの支払いも滞っている。
2月15日付エスタード紙(以下、エ紙)によれば、造船5社に対するセッテの負債は15~20億レアルで、最も厳しいエンセアダは唯一の顧客のセッテからの5億レが入らず、同時点までに3千人を解雇。同社の共同出資者は川崎重工と、LJの捜査対象となっているオデブレヒト、OAS、UTCの3社だ。
ERGへの負債は1億8千万レ~2億5千万レといわれるが、同社は他社からの注文もあり、従業員を配置転換して耐えている。三菱重工の共同出資者のエンジェヴィクスもLJの捜査対象だ。
IHIなどが参与するEASがセッテとの契約を一方的に破棄した事は2月23日付フォーリャ紙も報じている。6日付ヴァロール紙によると、EASは会社創設時に社会経済開発銀行(BNDES)から借りた18億レとPB子会社のトランスペトロへの石油採掘船建造用融資5億レ、短期融資1億7千万レなど多額の負債を抱えている。同社もブラジル側出資者のカマルゴ・コレアとケイロス・ガルヴォンにLJの捜査の手が入っている。
セッテの事業はシンガポールの企業グループ主導のジュロング社とブラス・フェルス社も請け負っており、3月28日付エ紙によれば、バルスコ被告は、セッテの事業を請け負った造船5社には賄賂の支払い担当者がいたと証言している。
3月6日付エ紙によれば、14年に大損失計上のPBはセッテに注文した石油採掘船建造数の削減も検討中だ。3月28日付エ紙は、検察が連邦会計検査院にBNDESからセッテへの融資停止を要請したと報じた。
4月26日付ヴァロール紙によれば、14年12月~15年3月の造船業界の解雇者は1万人超で、7月には4万人に達する可能性もある。