フェルナンド・ハダジサンパウロ市長(労働者党・PT)と、救急外来(AMA)を統括している主要団体のサンパウロ市医療発展協会(SPDM)やサンタ・マルセリーナ病院は、サンパウロ市の基礎医療体制の不安定さは医師不足が主因との見解で一致した。
サンパウロ市市役所は14年、前年度に契約できた医師が予定された数に達しなかったなどの理由で残った予算相当分の支出を削減しており、医療スタッフの確保や増員に支障をきたしている。
ジョゼ・デ・フィリッピ・ジュニオールサンパウロ市保健局長は「12時間対応のAMAの診察件数が21%も落ちたことは心配だ」とし、AMAを運営する団体の代表者と話し合った事を認めた。
医師不足の医療機関のため、国内外の医師と契約・派遣する連邦政府の「マイス・メジコス」政策擁護者でもある同局長は、14年のサンパウロ市の公共医療機関での診察件数はさらに100万人少なくなっていたと見ている。
医師を市内中心地から遠い医療機関に配置する際の問題点は給料の低さだ。間接契約の場合の月給は週40時間勤務で1万5千レアルで公共医療機関より良いのが普通だが、サンパウロ市の公共医療機関の医師の月給は、週40時間勤務の場合で7700レアルから1万1千レアルに上がったのみで、16年の月給も1万2千レアルの見こみだ。サンパウロ市保健局長によれば、給料を上げるだけでは医師を公共医療機関に呼ぶのには不充分だ。保健所(UBS)の数も理想は600カ所だが、実際には450カ所しかない。
OSSサンタ・マルセリーナ病院は、周辺地域の医療機関に務める医師は毎日、肉体的または精神的な暴力にさらされているとし、「酷い時は配置換えなども行うが、それでも辞職者する医師がいる」という。
サンパウロ市東部シダーデ・チラデンチス区に住む販売員のアマンダ・デ・カノーヴァさん(25)は1歳の娘が39度の熱を出した時、AMAカストロアルベスに行ったが診察してもらえず、「救急病院に行こうとしたが救急車が1台もなく」、見知らぬ人に車の相乗りを頼まざるを得なかった。彼女には4歳になる先天性外反足の息子もおり、生まれて以来、何度も手術の予約を入れようとしたが、「ただの一回のエコー検査さえできない」ままだという。
医師不足で診察してもらえない例は小児科以外でも頻繁に見られ、「死に至る病気だったら死んでしまう」と諦め顔の市民もいるのが実態だ。