遺伝なのか、矯正しないせいか知らないが、日本人には歯並びが悪い人が多いと思う。八重歯を可愛いと感じるほどに無頓着でもある。しかし、白く整然と並んだ歯、あるいは矯正器具を惜しげもなく見せて笑うブラジル人の中で生活すると、考えが変わってくる▼当地では治療費が比較的安いこともあり、コラム子も今は口元に銀の矯正金具を光らせている。日本人は体も顔も小さい上、元々は農耕民族なのに近年は柔らかい食べ物を常食するため、あごの発達がチグハグになったのか。それで収まるものも収まらなくなり、歯並びにずれが生じたのか―▼そんなことを考えていたら、「日本人の歯の寿命をのばす会」というサイトを見つけた。その代表の歯科医師によれば、北欧は歯の寿命が長く、日本は短い。例えば80歳の時点での自前の歯数は、スウェーデンでは21本、日本はわずか9本。砂糖消費大国の米国ですら17本と、驚くべき差がある▼その違いを生むのは、彼いわく、普段の手入れ。日本人は歯に不調がある時にしか歯医者に行かないが、北欧は定期予防やクリーニングのためこまめに受診する。両者の受診率の差、なんと88%である▼歯があれば食べることが楽しくなり、噛むことで血流も促進される。生活意欲も向上するので、歯が多く咀嚼能力の高い人ほど認知症患者が少ないという研究結果もある。歯列矯正は概して美容のためと思われがちだが、噛みあわせの悪さは脳の働きを鈍らせ、頭痛や肩こりまで引き起こすので、健やかな老後には欠かせないようだ▼ブラジル人の生活習慣には疑問符をつけたくなることもあるが、美しい歯を保つ努力は是非見習いたい。(阿)