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祖父と御嶽山=サンパウロ 新井知里

 昨年、突然大きな噴火をして日本中を驚かせた御嶽山。長野県生まれの私は、特別大きなショックを受け、すぐ懐かしい母方のおじいちゃんを思い出した。
 祖父は、長野県飯田市の繁華街に広い自転車店を持っていた。住み込みの従業員6人ほどいて、いつも賑わっていた。飯田市が桜の咲く頃に大火となり、町中焼けてしまうまでは、大きな蔵のある街では成功者だった。
 その祖父が明治の頃、名古屋に行き自転車を1台持って帰って来た。そして1回の乗り賃を取り、自転車を流行らせたことは何度も聞いた話である。
 祖父が若い頃、友人と一緒に御嶽山に登った。寒い頃で、山の家で火鉢を頼んだ。そうしたとき、神の山と思っていたイメージが吹っ飛ぶ出来事に出会った。
「チサト、よく聞くんだよ。お金を出した俺だけに火鉢が出てきて、友人には持って来なかった。お金をバカにしてはいけないよ」
 何度もおじいちゃんは私にそんな話をしてくれた。
 私はこのブラジルに一人で渡り、祖父の話を大切に思い出して暮らしている。
 日本の東京では、日本一高いというスカイツリーを作ったり、東北震災の事後の処理が遅々としているのに、首相は何億ドルというお金を他の国に送ったりしている。