笠戸丸移民の4割を占めた325人の沖縄系移民の足跡を徹底調査した『笠戸丸移民 未来へ継ぐ裔孫』(赤嶺園子著、306頁)が発売中だ。80レアル。
本紙と提携関係にある沖縄タイムス(本社・那覇市)から昨年10月に発行、ニッケイ新聞が編集協力した。
市町村別に、ブラジル永住者、アルゼンチン転住者、帰国者にわけ、生年月日、渡伯時年齢、没年、子孫の数などを詳細に記録。家族、知人の証言や書類、新聞記事、写真などを元に初期移民の生き様に迫っている。乗船者リストや写真なども盛り込んだ移民研究の資料として価値のある一冊だ。
著者の赤嶺さんは57年に移住、両国で大学を卒業し、琉球大学大学院で修士号を取得。サンパウロ市で「ソールナセンテ人材銀行」を経営している。
「移住した自分が恵まれた環境にあるのも、先人の血を吐く様な苦労があったからこそ」と思い立ち、ブラジル、アルゼンチン、沖縄まで自費で墓参しながら子孫を訪ね歩き、〃鎮魂〃ともいえる取材を数年かけて行ってきた。
「栄養失調や事故、結核で亡くなった人も多い。本にはとても書けないようなエピソードもあった」と目頭を押さえる。
「移住の歴史が風化している今、若い世代に読んでもらいたい。成功した人は一握り。帰りたくても帰れなかった先人の苦労を偲んでほしい」と話している。
ニッケイ新聞(11・3340・6060)、ソールナセンテ人材銀行(3276・5155/3208・5266)ほか、各日系書店でも扱っている。
なお、ポルトガル語版(50レアル)も刊行されており、同人材銀行のみで取り扱っている。