「肥満は本人の責任か否か」は結構、議論が分かれる命題だ。日本人は大半が「本人の責任に決まっている」と考えるだろうが、肥満の多いブラジルでは、それを「不可抗力」と見る人が多いようだ▼バスや電車の優先座席コーナーは通常、高齢者、妊婦、障害者のためのもの。どれも配慮を必要とする当然のケースだが、数年前からそこに「肥満」も加わった。糖尿病など病気を患っている人が多いから、というのが理由らしい。つまり、肥満は病気の一種なので「仕方がない」という考えだ▼肥満大国アメリカでは「太ったのはマクドナルドのせい」という理由で訴訟が起きる。当地でもマクドは大人気なので、そのうち同じ訴訟が起こるんじゃないかという気がしている。どちらも「自己責任」の国なのに、なぜか肥満が「他人の責任」になる。それだけ人間は食の誘惑に弱いということか▼聞く所によると、米国では校内でファースト・フードやコーラが販売されている。こうした企業は学校のスポンサーになる代わりに、校内で〃宣伝活動〃できるという仕組みらしい。子どもにはいい迷惑だが、企業にとってはこれ以上ないブランド刷り込みの場。こうしたシステムがまかり通るのはさすが資本主義。儲けのために、幼い頃から味覚を変えられてしまうのだから▼当地では肥満者の胃を小さくする手術が統一医療保健システム(SUS)で無料できるようになり、長蛇の列ができたという記事が昨年出た。肥満になったら手術で脂肪を切除し、同様に胃を小さくするが、食べるのは我慢しない――。これは根本的な治療なのだろうかと、首をひねりたくなるのは日本人だからか?(阿)