レビィ蔵相がばら蒔き支出大削減をするのに対し、大統領の足元である与党PTが大反発―という奇妙な構図になっている▼昨年10月のジウマ再選以来、大きく動いている経済指標がある。ブラジルCDSという金融派生商品の保証料率だ。元々は「取引先の倒産に備える保険のようなもの」が、ギリシャ危機以来「国のデフォルト(債務不履行)」にも使われる。「国家経済破たんの可能性」を金融商品化し、それで儲けようとする訳だ▼ブラジルCDSは選挙後の昨年10月末に10ベーシスポイント(bp)上がり、172bpに。これが高くなるほど「危険」と判断され、国債暴落に近づく▼それを避けるには国家財政の基礎的収支を好転させる必要があり、不況による税収減額に見合う支出縮小は必須。ジウマ大統領は緊縮財政を議会で通すには「PMDBの協力が不可欠」と判断をしてテメル副大統領に政局調整を任せ、同党のクーニャ氏に下院議長も譲った▼だから3月3日に緊縮財政案を上院が否決した時、CDSは244bpに急上昇し《トルコやインドネシアなど、ジャンク級の新興国よりワイド化した》(ロイター同5日電子版)▼最近で一番上昇したのは3月15日の200万人デモ前後で300bpを付けた。国際金融界に通じたレヴィ蔵相が基礎的収支好転にこだわるのは、亜国に襲い掛かったハゲタカファンドの怖さを良く知っているからだ。もし国債格付けを下げられたら標的にされ、暴落に一直線だ。でも大盤振る舞いしたい近視眼的政治家からの反発は強い。そしてラヴァ・ジャット作戦の行方…。不安定要素は事欠かない。(深)
ブルームバーグのブラジルCDSチャート http://www.bloomberg.co.jp/apps/cbuilder?T=jp09_&ticker1=Cbrz1u5%3AIND