60年代以来、ブラジル国内では「反抗の歌手」として知られるカエターノ・ヴェローゾとジルベルト・ジルが、7月に行うコンサートをめぐり、物議をかもしている。
7月28日、カエターノとジルは、イスラエルのテル・アヴィヴでコンサートを行うことをすでに発表している。
2人は60年代後半、反抗的な音楽家、芸術家たちを集め、ロックとブラジル伝統音楽の融合を試みた「トロピカリア運動」を起こしたことで知られるが、現在のふたりはフェイスブック上で「トロピカリアはアパルトヘイトに反対だ」と主張し、イスラエル国内においてパレスチナ系アラブ人がユダヤ人に差別されていることに対する問題提起のためのページを作っている。
このため、ただでさえユダヤ人とパレスチナ人の対立からテロが起きているテル・アヴィヴで、イスラエルの人たちから攻撃されることを恐れ、テル・アヴィヴでの公演をキャンセルするよう求める運動がファンを中心に起こっている。反対する人の中には、イギリスの伝説的ロックバンド、ピンク・フロイドの元中心人物、ロジャー・ウォーターズの名前まで含まれている。
この件に関し、ジルがエスタード紙のインタビューに答えたところ、今回のコンサートの目的は「あの国にはブラジルの音楽を何年も前から熱心に愛してくれている人がいる。だから行くんだ」とあっさり答えた。
そして「ステージで、ユダヤ人とパレスチナの対立について語るのか」と問われると、「その可能性はある」と答え、「基本的にイスラエル国内のパレスチナ人のために歌うが、ユダヤ人も全てが反パレスチナというわけではなく、友好関係を求めている人だっている」と持論を展開した。
さらに、インタビューワーから「あなたとカエターノはいつも政治的な姿勢を崩さない」と指摘されると、ジルは「そりゃ、軍政と戦ってきたわけだからね」と答えた。
そこでさらに「最近でも大型の政治汚職問題や暴力の問題は相変わらず消えないのに、ブラジル音楽が社会性を失っているのはなぜだと思う」と問われると、ジルは「そうかな? ヒップホップがあるじゃないか。ブラジル国内のヒップホップの連中は、社会性の点でも、伝統を塗り替えるという点でもトロピカリアを継承したと思うね」と語っている。
ジルもカエターノも今年で73歳だ。(5日付エスタード紙より)