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世界に誇るレンソイス国立公園の美景に潜む〃影〃

 見渡す限りの砂丘とそこに浮かぶ青い湖。高台から遠方を臨むと、濃い緑の熱帯林が生い茂る。近年観光地として人気が急上昇しているマラニョン州のレンソイス国立公園では、ブラジルで最も幻想的な光景の一つが見られる。しかし先週末に所用で訪れた際、そんな絵に描いたような佳景の裏側に、苦境を迫られる地元民がいると知った▼参加したツアーのガイドを務めたアドリアーノさんがその一人。彼が生まれる1年前の1980年、同地が「国立公園」に登録された。そのためアドリアーノさん一家は、老朽化した自宅の立て直しに罰金を科せられ、今後一切の増築を禁じられた▼「国立公園になったせいで、ここには電気もガスもこない。冷蔵庫が使えなくて食料が全部塩漬けになる。もう家族が二人も腎臓病で亡くなった」と明かす。約400レアルの月給で糊口をしのぐ彼に、町の病院まで通わせる余裕はないという▼連邦政府は03年から「Luz Para Todos」(国民全員に電気を)政策を実施しているが、「僕らは『国民』には入っていない。国立公園の住民には、当然の権利が保障されていない」と嘆く。代々農業で生計を立てていた地元民なのに、農地を作り家畜を飼うことを禁じられ、生活は困窮する一方だ。代々の〃文化伝統〃であった釣りも畜産も農業も「違法」にされた▼「僕らはここで生まれ、ここで死ぬ。何もなくても幸せだけど、政府は僕らのことも考えるべき」。その最も過ぎるほど最もな論理が通らない現実が、レンソイス国立公園にはある。世界に誇る景観美と地元民の困窮。絶景が抱く「光と影」に、複雑な思いが沸いた。(阿)