ダンボールを使った「ダンボールアート」で一躍脚光を浴びた岐阜県出身の芸術家・日比野克彦さんが、2020年東京五輪に向けて文化事業「東京キャラバン」を開催するにあたり、東京都歴史文化財団「アーツカウンシル東京」のメンバーらと共に当地に下見調査に訪れた。来年五輪が開幕するリオで、東京五輪へとつなぐ文化プログラムが始動する。
更なる成長の柱として芸術文化を位置づけた東京都は、世界無比の文化都市を目指す構想として「文化ビジョン」(案)を発表した。その先頭をきるのが「東京キャラバン」だ。
リオ五輪閉会式でアーティストを乗せた「キャラバン」(車)が出発し、日本では全国各地を巡り、芝居やダンスなどのパフォーマンスを披露するというもの。東京と各訪問地域が出会って新たな文化が生まれることから、テーマは「メタモルフォーゼ(変容)」とした。劇作家・演出家の野田秀樹氏を中心に、公共アートや舞台芸術も手がける日比野さんと現代美術家の名和晃平さん、3人のアーティストが企画に携わる。野田、名和両氏も来伯したが、一足先に帰国した。
サッカー好きで知られる日比野さんは、10年から日本サッカー協会の理事も務める。今回はジーコとも面会し、キャラバンへの応援の約束を取り付けた。「スポーツは世界をつなげるので、ブラジルで展開する際はサッカーとジーコをつなげていきたい」と意気込んでいる。
また「変容」というテーマについて、「その土地らしいものやや時代に合ったものを発信でき、色々な価値観が混ざって独自性が出るのが文化の魅力」と解説し、当地で盆踊りが若者向けのマツリダンスに変化し、日本にない手巻き寿司専門店が生まれ、ロリータ・ファッションやコスプレが広がるなどの「日系文化」のあり方に興味を持った様子。
「ブラジルではまさに、日系人によって日本の文化が独自の変容を遂げている。日本人が世界中に広まって文化を広めていく上でもブラジルは特別な国だと思う。そうしたことも考慮して、リオやサンパウロを位置づけできれば、新しい日本やブラジルの見方を発信できるのでは」と語り、今回の見聞を熟成させて構想を練る考えだ。
【日比野克彦】(ひびの・かつひこ)1958年岐阜市生まれ。東京藝術大学大学院修了。大学在学中にダンボール作品で注目を浴び、国内外で個展・グループ展を多数開催する他、パブリックアート・舞台美術など、多岐にわたる分野で活動中。近年は各地で一般参加者とその地域の特性を生かしたワークショップを多く行っている。
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サッカー通で知られるアーティストの日比野克彦さん。昨年のW杯期間中、日本各地で対戦国の国旗を合わせた「マッチフラッグ」が作られたが、これは彼の発案で10年の南アフリカW杯の折に始まったもの。また11年は、東京の日本サッカーミュージアムで「サッカーのチカラ展」を開催、協賛アーティストらの作品を展示・ネット販売して東日本大震災の復興支援も行なった。様々なサッカー&アート融合企画を進める日比野さんだけに、東京キャラバンでもどんなイベントが登場するか楽しみだ。
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