最近、人に会うと必ずブラジルの経済悪化の話題になる。GDPがマイナスに向い、自動車販売が、不調だった前年をさらに割り込み、ついにはブラジル人にとって鉄板と思われていた飲食業までが大幅に落ち込んでいる。
一方、公定歩合が上がり続ける中で、お金持ちの資産が膨らみ、富裕層の消費は活発化している。これまで、ボリュームの大きい中間所得者層をターゲットにしていた企業は、営業や商品開発のパラダイムシフトが必要になっている。
同時に公共事業を中心に受託をしていた企業も今は厳しい。政府が財政緊縮に転じ、公共投資を大幅に削っている。ペトロブラスに絡んだ贈収賄事件にて大手ゼネコン経営層が軒並み逮捕され、下請けとして取引していた会社は、いきなりハシゴを外され、支払いは遅れ、民間市場へターゲットを変えざるを得なくなった。しかし、民間消費も冷え込み、多くの市場が前年割れする中での営業転換も茨の道と言えるだろう。
ブラジル政府は、公共工事費の捻出と政府歳入の増加のウルトラCとして、19日に総額1984億レアル(約8兆円)ものインフラへの大型投資を呼び込む民営化計画を発表した。道路・鉄道・港湾・空港等の公共インフラの民営化策で、汚職に関わっていなかった中堅の建設会社や日本企業を含む外資系企業にとっても、参入のチャンス到来である。
しかし、あれだけの規模の汚職の中心にいた政党が未だに与党として政権を担っているブラジルが、簡単にクリーンになるとは思えない。再び汚職の渦に巻き込まれないとも限らず、慎重にならざるを得ない。
そんな時にブラジル人のコンサルタントの友人から、ブラジルの有力誌VEJAに面白い記事が載っていると教えられた。「次のスキャンダル」と題したその記事は、ブラジルでは政府が議員の票を就職斡旋により買い取ることは昔から良く行われてきたが、それが労働者党政権になってから爆発的に増えたとしており、各政府機関で働く政党関係者比率と汚職スキャンダル数(2007年?2010年)をグラフにしている。
そこには恐ろしい数字が並んでいる。各機関で働く政党関係者比率のダブルトップは、SUDENE(北東地域開発監督局)とMETRO(地下鉄)でなんと22%、約5人に一人。サンパウロ・メトロのシーメンスによる贈収賄は記憶に新しい。次が労働省で19%、健康省の14%と続く。
それに対して汚職数トップは95件で健康省、2位が48件でSUDENE、3位が45件のMETROと同じ顔ぶれで、そこに相関関係があるのは明らかである。
これらは、さもありなんというところだが、逆に驚いたのが、汚職スキャンダルがゼロの機関が七つもあることだ。海軍、空軍、陸軍、国立行政学院、オズワルド・クルス財団、民間保険監督局、INMETRO(国家度量衝・規格・工業品質院)の7機関だが、日本では汚職スキャンダルで一時期騒がれた軍関係がすべてクリーンなのは意外だった。
ブラジルであれば、聖域化し易い軍関係は相当あってもおかしくないと思われるからだ。軍関係の仕事をしているブラジル人の友人に聞いたところ、軍は極めてまじめでクリーンな集団で,外資にも門戸は開かれているそうだ。さらに軍はハイクオリティなものを求めており、正規の金額で購入をしてくれる、実は優良顧客である。
不況に陥った今のブラジルでは固定観念にとらわれず、営業のパラダイムシフトが求められる。