ミナス・ジェライス州で、ブラジル史上はじめてとなる、逃亡奴隷(キロンボ)の共同体出身者が州の役職に就任した。
キロンボとは、アフリカから連れてこられた奴隷が地主に反抗して脱走し、独自に作った共同体で、人里離れたジャングルや山岳地帯に逃げ込んだ脱走黒人奴隷たちは植民地期のブラジルの白人社会を脅かし続けた。
キロンボを形成した黒人奴隷たちは、祖国の伝統や文化を守って、隠れ住んでいることも多い。キロンボの中には攻め滅ぼされて全滅したものも多いが、2011年には、アマゾンなどを含む全国に1434カ所のキロンボが残っているとの報告も残っている。
今回、ブラジル南東部のミナス・ジェライス州で役職に就いたのは、同州にあるキロンボ出身のヴァンデリ・パウロ・ドス・サントスさんだ。ヴァンデリさんはまだ学生だが、同州農務局の家族農業課が管轄する「伝統的な部族と共同体」のための政策担当ディレクターに就任した。
ヴァンデリさんの仕事は、共同体の人々の意見を聞き、彼らが自らの領地だと主張している土地の所有権問題などを解決するというものだ。
「私に課せられた任務がすごく大きなものであることはわかっている。キロンボや先住民、伝統手法を守る漁師など、小さな共同体で生きる人たちにも、法的な恩恵が及ぶことと共に、彼らの問題が一般社会にも関心を持って知られるようにしていきたい」とヴァンデリさんは語っている。
ヴァンデリさんは同州オウロ・ヴェルデ・デ・ミナスのキロンボに住み、10人兄弟のひとりとして育った。父親のジョアン・パウロ・マルチンス・ドス・サントスさんはすでに他界しているが、キロンボのコミュニティのリーダー格で、住民たちの権利を求めて戦った指導者だった。
「今回、私がこの仕事をすることになったのは、父たちが戦ってきた実だと思う」とヴァンデリさんは語っている。ヴァンデリさんは、同州にあるキロンボが集まって作った連盟の青年部でリーダー的存在として活動した経験も持っている。(2日付フォトス・プブリカスより)