【日本発=秋山郁美通信員】昨年来伯した安倍晋三首相の肝いりで開始されたJICA日系社会次世代育成研修の大学生版で訪日中の、9カ国20人の日系大学生の様子を伝える。1日に訪日した中南米からの日系大学生は、学部によって3グループに分かれ、横浜国立大学、東海大学、東京女子医科大学で研修を受けている。全員が合流した16日の東海大学担当の研修では、研修を請け負う海外日系人協会の小田英理名さん、国際学科の小貫大輔教授らとともに、静岡市にある東海大学海洋学部博物館や沼津市の深海水族館を訪れた。
台風11号接近のため大雨の道中だったが、バスの中ではギターの弾き語りで盛り上がり、「世界に一つだけの花」などを大合唱した。研修も後半に入りすっかり打ち解けた様子。
サンパウロ市から参加した滝浪仁さん(ひとし、21、三世)は、「不思議な感じ。別々の場所に住んでいて初めて会ったのにどこか似ている」と親近感を抱いている。マッケンジー大学で電気工学を学ぶ滝浪さんは5度目の訪日。「日本の大学院で学んで新幹線やリニアモーターカーのエンジンを設計したいという気持ちが強くなった」と語った。
ペルーから参加した最年少のペレス公子さん(18、三世)は、リマの大学でサービス経営を学ぶ。幼少時代、日本に住んでいた。「ペルーに行ったときはあまりの違いにショックだった。日本ではどこに行ってもサービスがあるのが当たり前だが、ペルーにはない。どうしたらペルーにもサービスを取り入れられるのか考えている」と笑顔で話した。
海洋博物館では、駿河湾を再現した大水槽やクマノミ水族館に、「水族館自体初めて」という参加者も多い一行は大興奮。日本では一般的になってきた体験型展示にすっかり感心した様子。
沼津の深海水族館では世界でも珍しい深海生物展示を見学した後、土産物店へ。茶飴、わさび塩など静岡ならではの土産やふりかけ、梅干しなどを買い込んだ。ドミニカ共和国から唯一参加の笠原浩一さん(20、三世)は「お茶漬けは家族が喜ぶ、超過料金を払ってでも持って帰りたい」とにっこり。
一行は研修中、JICA横浜センターの宿泊施設で集団生活を送る。ボリビアのコロニア・オキナワから参加した玉城有沙さんは「朝から晩までみんなとずっと一緒で、家族に連絡するのも忘れるくらい。大切な仲間ができた」と話した。
小貫教授は学生の印象について「自己紹介を日本語でさせるとみんな立ち上がって型にはまった挨拶をして、ある意味かわいげがなかったが、西・葡語でやると座ったままでくだけた雰囲気で愛嬌が出た。自分たちが意識していない態度表現を知って、考えてもらいたい」と語った。
研修はさらに続き、一行は26日に出国する。