またしても、勝ったのが不思議といえるほどの試合だった。その証拠に負けたアトレチコ・ミネイロのファンが全く気落ちする様子もなく試合後も気勢を上げている。
「勝ち点は並ばれたけどまだ俺達が首位だ。お前達のこんな勝ち方は続くはずがない。今度は俺達の地元で叩きのめしてやる」と言われたかのようだった。
それでも前半はなんとか四分六分の戦いだった。司令塔が出場停止、ゴールキーパーを怪我で欠くコリンチャンスだったが、42分にカウンターからティーンエイジャー、マウコンが鮮やかに決めて先制。
余談だが、マウコンは違法な自動車学校業者に金銭を支払い、不法に講習・手続きの過程を縮めて運転免許証を取得した疑いがもたれている。「ゴールの後の涙は、その事が原因?」と翌日の新聞に散々書かれていた。「マスコミに叩かれ強い」ことも有名選手の才能のうちだ。
「前半が四分六分なら後半は?」といえば、二分八分で一層押されっぱなしの展開だった。代役ゴールキーパーの大活躍が無ければ、確実に逆転されていただろう。試合終了まで30分もあるのに、残り時計を見るのがとまらなかった。
一番肝を冷やしたのは、後半24分のこと。ゴール前でフリーキックを与え、壁を作るコリンチャンス。壁の上を越されないようにキックと同時に全員がジャンプ! まんまと一杯喰わされ、ボールはジャンプした壁の下をコロコロ抜けていくではないか!
ハラハラドキドキ、もはや万事休す――。敵ながらめったに見られないトリックプレーと思いきや、ボールはポストを叩いた。
ロスタイムもしのぎ、辛くも勝利するも、監督チッチの試合前コメント「内容の伴った試合をした上で勝ちたい。たまたま勝っても意味はない」の台詞が頭をよぎる。
これを「たまたまの勝利」と呼ばずに何と呼ぶ? どっちが勝利にふさわしかったかは誰の目にも明らかだった。
司令塔と正ゴールキーパーは次から復帰だが、今度はDFの中心選手が出場停止…。たなぼたの勝利とはいえ、ファンは欲張りなもの。次戦は「首位獲りのクリチーバ」となるのだろうか。(規)
タグ:コリンチャンス 自動車 写真ニュース クリチーバ チッチ