毎週のように財界の大物が逮捕されるラヴァ・ジャット作戦の影響もあり、政治経済の不安定さが増しており、財政緊縮実行の見通しが極めて暗くなる状況下、世界最大の信用格付け会社「スタンダード&プアーズ」(以下S社)が次の評価でブラジル投資格付けのランクを引き下げる可能性が濃厚となっていると29日付伯字紙が報じた。
同社によるブラジル格付けは18段階の上から10番目「BBB-」。投資適格とされる最低限のランクだが、3月23日には「安定傾向」だった注釈部分が、7月28日の昼過ぎに「下降傾向」に変更となった。
ゴールドマン・サックス社のアルベルト・ラモス分析員は「引き下げ懸念は予測されていたが、出されるスピードが予想を上回るものだった」と語る。今回の〃最後通牒〃後、本番評価が出るまでに、フォーリャ紙には「通常、格付け会社は12~18カ月の猶予期間を設ける」と書く。
S社は08年に、ブラジルを最初に「適格」のランク付けした会社だ。同業のフィッチ・レーティング社とムーディーズ社は、ブラジルを最低限の投資適格ランクより1段階上に位置づけている。
ブラジルでは、国際投資家が公債全体の20%を、株式の25%を所有している。もし降格されれば国債の金利を上げざるを得ず、レアルが下落することが予想され、さらに財政の資金繰りが厳しくなる。投資家にとっては3大主要格付け会社の内、少なくとも2社が「投資適格」と格付けしていることが、株式や金融商品に投資する際の条件である。
S社による「下降傾向」の発表のあと、米ドルが一気に2%以上上昇したが、その日の終わりには勢いも弱まり、28日は前日比1・56%米ドル高の1ドル3・415レアルで終了した。
株価は大きな影響を受けず、それまでの7日連続安から若干反転し、Bovespa指数49601ポイントと、前日比1・78%高でその日の取引を終えた。
S社は、ブラジル景気の回復が格付け改善の鍵を握るとしているが、肝心の国民総生産(GDP)は低下基調だ。同社3月23日発表のブラジルGDP成長見込みは、今年が1%減少、来年が2%上昇だったが、7月28日の発表では今年2%減少、来年ゼロ成長と変更された。
ブラジル政府が先週発表した今年度の基礎的収支黒字目標額をGDPの1・1%から0・15%への引き下げは、S社の今回の判断に大きく影響した。
現在の政府と議会とのギクシャクした関係、政権与党内の労働者党(PT)と民主運動党(PMDB)間の不協和音、大統領罷免に動く野党の動き、10%を割り込んだ政権支持率などを、経済の上昇に不可欠な「政治の安定」を脅かす要因とS社はみなしている。