ホーム | 日系社会ニュース | 在外資産再国内化法案に注意を=25万ドル超の未申告資産=18年から口座情報交換か
PwC監査法人のアウバロ・タイアルさん(PricewaterhouseCoopers)
PwC監査法人のアウバロ・タイアルさん(PricewaterhouseCoopers)

在外資産再国内化法案に注意を=25万ドル超の未申告資産=18年から口座情報交換か

 国境を超えた不法蓄財や脱税を阻止するため、米国やOECD(経済協力開発機構)を軸とした国際的な規制の枠組み作り気運が高まる中で、当地の国税庁に未申告の資産を日本などに持っている人や法人に不安が広がっている。当地で未申告の日本の銀行口座に25万ドル以上(約3090万円)を所有している個人や法人、日本で土地や資産を遺産相続した移民などに関係するケースがでてきそうだ。PwC監査法人(サンパウロ市バラ・フンダ区)で26年間働くフィナンシャル・サービス専門家、アウバロ・タイアルさん(44)に聞いてみた。

 ペトロブラス疑惑に代表されるように賄賂や脱税手段として在外口座が頻繁に使われている。これを防止するため、米国やOECDが中心になり対抗策がここ数年練られ、2018年を境にG20国などでは口座情報の自動交換が始まる流れになっている。
 タイアルさんによれば、ICMS(商品流通サービス税)統一化で減収する穴埋め収入源として、連邦政府が下院議会に提案している『在外資産再国内化法案』(repatriação)は、中央銀行や国税庁に未届けの在外資産を正規化する方法としては最もコストが少ないものになるはずと見ている。審議中の法案では、正規化する総額の17・5%を税金として、加えて同率を罰金として計35%を徴収される。
 一見高額に見えるが、「今現在でも正規化は可能だが27・5%の所得税、中央銀行や国税庁への罰金、さらに遅れた分の利子が追加されるので35%よりかなり高い」という。
 いま、在外資金正規化の動きが高まっている主な理由は二つ。国内的には、同再国内化法で見込まれる莫大な税収(15日付エスタード紙、250億レアルと推測)を、今年の歳入に組み込まないと財政収支が赤字に転落しそうだという財務省の危機感だ。
 同時に、国外的には昨年9月にOECDがG20財務大臣会議で発表した「税務に関する自動的な金融口座情報交換のための基準」(AEOI)にブラジルも署名し、2018年から実施を目指している点がある。
 このAEOIの流れの発端は、米国が2010年から始めているFATCA(外国税務コンプライアンス法)だ。国外に住む米国籍者の口座情報の提供を、米国内に支店を持つ世界主要国の金融機関に課したもの。
 伯字紙でも大きく扱われていないが、ジウマ大統領が接待同然の今回の訪米中に署名した文書の一つがFATCAだ。米伯間では相互の在外口座情報などはFATCA専門機関を通して自動交換されるようになる。
 この流れを受けOECDも、在外口座を利用した脱税防止のための加盟諸国の税務当局の取り組みとしてCRS(共通報告基準)を作った。この基準を未加盟国にも広げる枠組みがAEOIといえる。
 ヴァロール・エコノミコ紙14年2月24日付によればAEOIに加入した国の間では「25万ドル以上」の在外口座情報などが18年以降、自動交換されるようになる。OECDサイトによれば日伯ともに18年に開始予定。日本ではマイナンバー制度を来年から開始するなど準備が進んでいる。
 時間の問題で在外資産は主要国の税務当局には筒抜けになる。その時点で、たとえ合法資産でも未申告の場合は、罰金などが科せられる可能性があるようだ。
 タイアルさんは「在外資産再国内化法案が可決される可能性が高い今年後半から来年にかけての政治動向に注意を。今は非常に重要な時期です。詳細は専門家に相談を」と呼びかけた。