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自軍応援より、敵をからかって楽しむ?!=ブラジル・ファンの厳しさと滑稽さ

 7月29日ブラジル全国選手権16節コリンチャンス対ヴァスコ・ダ・ガマ(以下ヴァスコ)の試合が行われた。
 前節まで首位と勝ち点2差の2位につけるコリンチャンス、前節大敗で意気消沈、降格圏に沈むヴァスコをホームに向かえ、勝利は絶対。できれば大量得点も望みたいところだったが、低調な前半を0対0で折り返した。
 理由ははっきりしている。今季新加入のセンターフォワード、ワグネル・ラブが〃からっきし〃なのだ。彼が好機を逸する度に、スタンドからの野次は高まるばかり、案外ナイーブな性格なのか、近頃はプレーも萎縮気味だ。
 コリンチャンスのセンターフォワードなんて、「俺様が一番」と思ってなければ務まるものではない。敵は相手DF・GKだけに非ず、メディア、ファンのプレッシャー、信用がなくなれば味方のパスも来なくなるし、ベンチには「あの野郎、怪我でもしねえかな」と虎視眈々とその座を狙っている控え選手がいる。
 案の定ラブは前半で下げられたが、彼が下がった後半は攻撃陣が爆発した。1分、15分、30分と立て続けに得点して3対0。得点の度に周りと抱き合って喜んだが、遠くで「ラブ、ざまあ見ろ!」と聞こえた際はブラジルの厳しさを痛感した。
 連敗、しかも大差負けの続くヴァスコのファンは2点目が入ると、クラブへの抗議の意思か、応援を放棄して帰り支度。
 コリンチーアノはそれを全方位から取り囲んで野次のあらしを浴びせていた。
 対戦相手との過去の因縁をほじくり返し、嫌味を簡単なメロディーに乗せて大合唱。50年近くいがみあう伝統チーム同士の対戦は、相手ごとに悪口のパターンを変えている。
 警察に警棒で追われている敵チームのファンをからかう歌。普段「腰抜けのオカマども」と罵る相手と国際女性の日(3月8日)に対戦したとき専用の歌もある。ストレートにコリンチャンスを称えたり、素直に応援するより、からかい系の多いのではないかと思うほどだ。
 この創造性を、ちょっとでも世のため人のために使えばなあと言うのは無理な相談か…。
 話が逸れた。とにもかくにもコリンチャンス、全国選手権折り返しまであと3節の段階で2位キープは決して悪い成績ではない。ブラジル杯も始まり過密日程の待ち構える中、好調を維持できるか、くれぐれも4月にはまり込んだ大スランプだけは御免被りたい。(規)

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