ブラジル佐賀県文化協会(西山実会長)が2日、創立60周年を祝ってサンパウロ市の同会会館で記念式典を行なった。副島良彦副知事、中倉政義県議会議長および一般参加者含め15人の慶祝団を迎え、会発足から還暦の節目を祝った。
1910年、サントス港に到着した第2回ブラジル移民船「旅順丸」に乗船していた15家族60人が先駆けとなり、これまでに約4500人の県人が移住した。宮崎八郎氏を初代会長に迎えて前身となる「サンパウロ佐賀県人会」が発足してから、今年で創立60周年を迎えた。
式典に先立ち取材に応じた副島副知事は、「初対面のはずなのに、同郷のためか非常に親近感が沸いた」と厚い歓迎に感激した様子で、「移住者への激励と、さらなる友好深化に向けて日伯間の友情を確認したい」と訪問意図を説明した。
50周年、55周年時と同様に、会館前で桜の植樹を行い式典へ。270人の参加者を前に秀島正幸副会長が開会を告げ、両国国歌斉唱後、先人への黙祷が捧げられた。挨拶に立った西山会長は、「会の歴史は会員や母県からの支援、そして移住者を温かく受け入れてくれたブラジルという国の優しさがあってこそ」と感謝を示した。
来賓には日系3団体代表者や、飯田茂在聖領事部長、在亜佐賀県人会のウメサキ・フラビア会長らが訪れ、祝福の言葉を送った。野村アウレリオサンパウロ市議からは、これまでの功績を称え県人会に表彰状が送られた。
会から85歳以上の高齢者29人と、歴代会長の江頭幸男、井上清、辻定男、吉村幸之4氏に感謝状が贈られた。代表謝辞に立った江頭さんは、「この会館は約30年前、母県などから多大なご支援を頂き建設された。様々な催しを開催でき、時間を有効に使えている。60年の歴史は、各方面からの援助の賜物です」と感謝した。
続いて、県人会と県との間で記念品の交換が行なわれた。また、県から日系3団体へ寄付金、協賛企業(味の素、久光製薬)へは表彰が贈られた。元留学生・久保カチアさんの挨拶の後、県歌「栄の国から」を大合唱し祝賀会へ。日舞や居合い、薙刀、健康体操の実演が行なわれ、最後はサンバショーが華を添えた。
サンパウロ州プロミッソン生まれの花田マリアさん(90、二世)は、「健康体操で週2回は会館を訪れます。ホールは葉隠館として剣道などにも活用され、いつも賑やかです」と会の良さを紹介した。
慶祝団の一員として来伯した60代女性は、「華やかな希望を持って移住した先人たちは、言葉にできないほどの苦難を越えて、歴史を重ねたんだと実感した」としみじみ語った。
■ひとマチ点描■ロンドリーナから祝福に=松尾進蔵さん(95、二世)
佐賀県人会の創立60周年式典に、はるばるパラナ州ロンドリーナから駆けつけた。高齢者表彰の代表謝辞では、「田舎生まれの不学者」と謙遜しつつ、サンパウロ市まで祝福に駆けつけるほど会への思いは強い。
両親は1917、8年ごろ、モジアナ線ジャタイ耕地へ入植。松尾さんは20年5月に同地で生まれた。6年間の義務農年を終えた後、ノロエステ線アラサツーバ管内最古の日本人入植地、アグア・リンパ植民地へ。28年に5アルケールの土地を購入し、コーヒー農として独立するも、4年後に霜で全滅を経験した。
37年から移り住むロンドリーナでは、写真店や飲食店を営んだ。父・峰三さんは同地で、佐賀県人会の支部長を務めていたという。
記者には、「9月6日はアグア・リンパ入植百周年式典で待っていますよ」と声かけ。95歳にしてこの活動の幅の広さ、敬服に値する。(祐)
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佐賀県人会の創立60周年式典。慶祝に訪れた中倉政義・県議会議長には、小学5年生の同級生にブラジルへの移住者がいたという。「学級で送り出した頃が懐かしい」と思い出すその友人は、県人会調べで5、6年前に既に亡き人に。再会を果たせなかったことを悔やみつつも、親族や関係者から故人の写真が同会に寄せられていたことを知り、中倉議長は「まさかブラジルで亡き友人の写真が見つかるなんて」と驚きの様子だった。