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動物実験廃止に向かうブラジル

 ブラジルが欧州などに続き、動物実験廃止の方向へと動き出した。国家衛生監督庁(Anvisa)が先月30日、動物実験コントロール連邦審議会(Concea)が指定する17種類の代替法を認可したことによる。医薬品や化粧品の開発にあたり、皮膚や目への刺激性試験など一部の試験に対する動物実験を、5年を限度に禁じるという▼この動きへの決定打となったのが、2013年10月に起きた〃実験動物救出事件〃だ。動物愛護活動家らが動物虐待の告発があったことなどを理由に、サンパウロ州サンロッケ市のインスチチュート・ロイヤルに侵入し、実験に利用されていた200匹近いビーグル犬やウサギを盗み、保護したという事件である▼当時、ブラジル人の活動家は随分と過激な手段に出るものだとカルチャー・ショックを受けたが、更に驚いたのは、それが意外にも国民の支持を得たことだ。日本だったら「非常識」「動物実験は必要悪」と社会から冷ややかな目を向けられたことだろう▼しかし、当地では子どもを神聖視するのと同じ心理が動物に対して働くようで、「弱者は保護すべき」と感じた人が多かったのだと思う。結果、同事件は動物実験の是非を問う議論の引き金となり、活動家らは世論を味方につけて今回の実験廃止へとこぎつけた。ちなみに同施設は事件後まもなく閉鎖した▼動物愛護運動が盛んな欧米の影響が強いこともあってか、当地におけるこの種の運動は盛んである。教育レベルや治安などは世界的に見て低水準な一方、環境保護や動物愛護など先進的な面も持つのがブラジルだ。今回の決定を機に、過激派の活動家たちが更に勢いづきそうだ。(阿)