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細川理事と星事務局長
細川理事と星事務局長

人文研=日系社会の実態を大調査=全伯の300団体を訪問=新たな「日系」像探る

 サンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長、以下、人文研)が創立50周年を記念し、大型調査事業をスタートさせた。外交120周年記念の公式事業。テーマは「多文化社会ブラジルにおける日系コミュニティの実態調査」。今月から2年間かけて全伯に約300あると推定される日系団体を訪問し、インタビューやアンケート調査を通して各日系社会の経済文化活動や地域社会への影響、混血の実態などを総合的に分析する。「日系社会は衰退し消えていく」「日本人の精神性が失われつつある」という一般説に違和感を抱いた細川多美子理事が発案者となり、「日系」の定義やアイデンティティの再検討を目的に企画した。

 細川理事は「2008年から全国規模で日本祭りが広がっているし、盆踊りも流行っている。『消えていく』より、むしろブラジル社会に日本文化や精神性が『残っていっている』のが実感。何が残っているのかを中心に見て行きたい」との思いを明かした。また非日系の日系社会参入も徐々に進んでいることから、「『日系社会』は『日本・日系人の活動の場』という概念も変えていかないと」と語る。
 人文研が最後に実態調査を行なったのは約30年前。当時とはテーマも異なるため、調査方法や内容も刷新された。「今回の調査により、30年前の推定よりも現実的な姿がみえるはず。新しい日系像を作らないといけない。日系人口も算出できるのでは」と意気込んでいる。
 調査対象の「日系団体」は「文化体育協会」や「会館」と呼ばれる組織を想定したもの。これらは街の文化施設として定着し、市と協力して様々な事業を促進するなどブラジル社会に貢献している。そのため、文協を中心に調査をすれば、各地の日系社会の実態や日本民族の特色が浮き彫りになると考えた。
 調査は今月初旬、サンパウロ州マリリアとカフェランジアを対象に始まった。人文研職員のほか現地と日本の研究者、現地調査員、JICAボランティア(要請中)など10人程度で調査を進める予定。総予算は54万3千レを見込む。
 細川理事と星大地事務局長は「資金集めも調査員探しもまだこれから。調査に意義を感じてくれる人に支援をお願いできればありがたい」と協力を呼びかけた。問い合わせは人文研(11・3277・8616)まで。