エレベーターに張られた「マンションの水が戻りつつある」との通知は、デザイナー、クラウジオ・ロペスさん(40)を安堵させるに充分だった。
シャワーは15分以上かかるようになったし、洗濯機も週に3回使われるようになった。「水を無駄使いしているわけじゃない、日常生活は普通に戻り始めているだけ」とサンパウロ市北部のヴィラ・マリア在住のロペスさんは言う。
水不足の危機は全く去っていないし、貯水池の水位は昨年より低い。さらに悪い事に、水の消費を元に戻す人が増えている。
サンパウロ州全体のコンドミニアムの管理をしているレロ社によると、水を節約することで水道代の割引を受けているコンドミニアムは、3月には82%あったが、7月はその比率が76%に落ちた。100近くのコンドミニアムは水危機以前より多くの水を消費している。
ロペス氏は「ベランダに雨水を取り込むために管を置いたりもしていたけれど、水不足の酷いグアルーリョス市に住む母にあげてしまった」と語る。
結果は水道代の請求書に如実に表れた。水危機の前は月々60レアルだった水道代は、危機の最中は18レアルまで下がったが、最近はまた、45レアルまで戻った。
医師のフランシスコ・ドメニシ・ネットさん(73)は、サンパウロ市中央部コンソラソン区の、自身が管理人を務めるマンションの水道代の請求をみて驚いた。消費が急増したのだ。「マンション全体での請求も、3500レアルから6900レアルに跳ね上がった。水道代そのものが上がったり、節水ボーナスがなくなったりした分以上の大幅な請求増大だ。住民は水不足には敏感だったはずなのに気が緩んだ可能性は否定できない」と語る。
市内東部、ヴィラ・カロンの住民で、日払い労働のイラシ・マリア・デ・カイレス・ピニェイロさん(52)も、水を快適に消費し始めた事を認めている。今年初め、カンタレイラ水系の貯水率が5%まで落ちた時は、シャワーの時に身体に石鹸をつけている間は水を止めていたし、シャワーで使った水をため、トイレを流すのに使ってもいたが、5月以来、その習慣もなくなった。
市民意識の変化を受けて、サンパウロ州水道公社(Sabesp)も、大サンパウロ都市圏での浄水生産量を増やす事を余儀なくされた。
Sabespは、水危機の始まり以来、サンパウロ市内89区にあるコンドミニアム3万カ所以上に職員を派遣し、節水指導を行っている。(9日付エスタード紙より)