東京都葛飾区で2001年6月、日系人の男2人が暴力団員に雇われ、日本人男性の自宅に押し入り拳銃で射殺し、妻に重傷を負わせた事件の被告人尋問が11日午後、サンパウロ市のバーラ・フンダ刑事裁判所で行われた。この日出廷し尋問を受けたクリスチアーノ・イトウ被告(38)は13年ほどデカセギとして日本に住み、犯行後に帰伯、2011年に当地で逮捕されるまでサンパウロ市近郊で生活していた。現在はサンパウロ州アンドラジーナの刑務所に勾留されている。同被告は公訴事実を認め、「正しい位置から人生を生きたい。家族もいる。然るべき刑に服したい」とのべた。
後頭部から首筋、腕に黒い刺青を入れたイトウ被告は手錠に繋がれ、警官に伴われて出廷した。帰伯後に結婚し、子供も2人いると答えた同被告は、「これまでの証言や証拠の示す内容に異論はあるか」との裁判官の質問に、「ありません」と答え、冒頭の言葉を呟くように言った。
犯行についての供述を求められ、もう一人のマルセーロ・フクダ被告と一緒に住み、同じソニーの工場で働いていたと説明。ブラジル人の友人2人の仲介で、日本人に殺人を依頼されたと供述した。2人は週末になると、成田空港近くのディスコなどによく繰り出し、日本語はほとんど話せなかったという。
「仕事の依頼」を受けた時、イトウ被告は最初拒否したという。「でも、その後二週間くらいして結局引き受けることにした。たぶん金が理由だっただろう」と力なく述べ、「引き受けたからには、後に引けなかった。やるしかなかった」と続けた。
仲介したデニスという名の友人に車で、被害者の川上芳孝(かわかみ・よしたか)さんの自宅まで連れて行かれ、2人でガラスのドアを破り侵入した。
真夜中だったために被害者は就寝中と思っていたが、入った時には起きて立っていたという。「自分が一発目を撃った。(被害者の体の)どこかに当たり、倒れこんで動かなくなった」。一発目を撃った瞬間に銃の挿弾子が外れた。
その銃でイトウ被告は、自分の方に向かって歩いてきた被害者の妻を殴りつけると倒れこんだ。彼女は家具に頭をぶつけて気を失ったという。その後、フクダ被告が被害者に二発目を撃ち2人は現場を去った。
妻の女性については「殺すつもりは無かった」とし、被害者については「名前も覚えていない。事前に写真を見せられただけで、知らない人だった」とした。
受け取った報酬の金額については、「約束していた金額は100万(円)だったと思う。でも、もらった金額はそれより少なかった。残りは結局支払われなかった」と話した。受け取った金額を2人で分けてドルに両替し、犯行1、2日後に帰伯した。得た報酬は、「母が病気だったので、その治療費に充てた」と言う。
暴力団との関わりについては「刺青は(暴力団とは)何の関係もないし、一度も入ったことは無い」と否定し、尋問は1時間ほどで終了した。
今後、陪審裁判を行うか否かを裁判官が決定し、両被告側に異論が無い場合は、陪審裁判で判決が下される。両被告の弁護士は異議申し立てをする意思はないとしており、残っていた他の証人の尋問も行われないことが決定しているという。
裁判所関係者は「裁判官の判断を待たなくてはならないが、今年にも陪審裁判が開かれるのでは」とみており、事件発生から14年、ようやく実行犯2人が法の裁きを受ける兆しが見えてきたようだ。
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