朝晩冷え込んで、風邪ひきの人も多いサンパウロから、熱中症で死者も出ている東京に戦々恐々で戻った。相当覚悟をしてきたが、運良く帰国した日から猛暑が和らいできて、溶けそうにならずに済んだ。
しかし、まさか南国ブラジルから極東の日本に来て、暑さを恐れるようになるとは思わなかった。日本の湿度の高さは独特で、ブラジルの35度と日本の35度では、明らかに日本の方が息苦しく、過ごしにくい。さらに、途中の30時間弱のフライトで体が冷やされ、体力を消耗した後なのでダメージも大きくなる。
きっかけは震災などだったが、この暑さも手伝って、少し前にこのコラムにも書いたが、ビジネス用の服装も、日本はどんどんラフになっている。クールビズということで、ノーネクタイが普通になったが、実はブラジルは何十年も前からクールビズだったとも言える。
逆に、最近のサンパウロの冬は寒く、ちょうど今頃は、みんなウォームビズを実践している。クーラーはあるが、暖房がほとんどないブラジルで、断熱材を使っていないオフィスビルの部屋は、しんしんと冷えて、事務所の中でもウォームビズでないと寒くて風邪をひきそうになる。
なかなか日本の人には、ブラジルで部屋の中でコートを着て、寒さに震えながら働いている光景はイメージできないだろう。同じ10度ならば、確実に東京よりサンパウロの方が体感温度は低く感じる。
このように、日本とブラジルで、逆転現象が様々な分野で起こっているのだ。何と言っても、最近ブラジルに行った人が異口同音に愚痴るのが、物価の高さだろう。昼食1500~2000円は当たり前。焼き魚定食3000円、冷奴1000円など、日本ではあり得ない価格が街にあふれている。
携帯端末「iPhone6」が15万円、家庭用ゲーム機「プレステ4」が20万円。日本人からしたら誰が買うのかと思うが、ブラジルもiPhoneユーザーは多く、大画面好きなので、特にiPhone6プラスは他国よりもユーザーが多いのではないかと思う。とにかく何でも高い。あらゆる物がこの10年で、ブラジルの方が高くなってしまったようだ。
ちょっと変わったところでは、ある意味日本文化とも言える刺青。ブラジルで刺青をしている人の多さには驚く。ほとんど、イヤリングの穴を耳に開けるのと同じファッション感覚である。
ワンポイントなどの刺青も含めれば、若者の半分以上がしているのではないだろうか。間違った漢字を入れている人もいれば、遠山の金さんのように両肩全体に派手な柄を背負ったお嬢さんも珍しくない。このようなファッションTATOOが日本に逆上陸する日も近いかもしない。
ボサノバも、実はブラジルでは日常的にあまり聞かれていない。どちらかと言うと日本の方が、レストランやカフェなどで流れている曲はかなりの確率でボサノバである。うるさくなく、心地よく、暗くなく、日本人の心情に合っているのかもしれない。
このように、日本とブラジルを頻繁に往来していると、実は日々世界は動いていて、いろいろなところで逆転現象が起きていることに気づく。このトレンドのかすかな動きをマーケティングでキャッチして、ビジネスに活かせるようになると面白い。
サンダル専門店「HAVAIANAS」も日本で浸透し、ラバーシューズブランド「Melissa」もついに原宿にオープンした。それらを履いてビーチに繰り出す若者が増えているということは、次に流行るのはフィオ・デンタル(fio dental)かも…。湘南がリオになる日も近い!?