原爆投下70周年を迎えて16日、サンパウロ市ピニェイロス区と大竹富江文化センターの共催により、同センターに隣接する聖ヨハネ公会堂で広島・長崎の被爆者追悼ミサとコンサートが行われた。
挨拶に立った副区長のタキヤ・ハルミさん(53、二世)は、「ピニェイロス区には日系人が多い。原爆投下70周年を『ただニュースが流れて終わり』にしたくなかった」と実施の経緯を説明。人権問題に関心が高いアドリアーノ・ジオゴ元サンパウロ州議員に相談したところコンサートの案が持ち上がり、大竹富江文化センターが協賛した。ジオゴ氏がサンパウロ市立劇場と交渉し、コンサートが実現した。
小さな教会は200人ほどの観客で満員となった。粛々と追悼ミサが終了すると、同市立劇場マリオ・デ・アンドラーデコーラス団代表のテノール歌手、エルダー・サビールさんが堂々たる独唱を披露した。黒澤明監督の映画「八月の狂詩曲」の挿入歌であるヴィヴァルディの『スターバト・マーテル』に始まり、日本の代表的童謡『赤とんぼ』などが、高く澄んだ美声で歌われた。観客は曲が終わる度に立ち上がり、大きな拍手を送った。
指揮はウィーン国立音楽大学在学中の指揮者兼ピアニスト、ルイス・ギリェルメ・デ・ゴドイ氏が、演奏はパウリスターナ室内管弦楽団のメンバー12人が担当した。
思いがけずハイレベルな演奏を聴くことができた教会メンバーの古川恵子さん(74、山口)は、「生でしかも、すぐそばでタクトを振る指揮者の姿を見ながら、高度な音楽が味わえ最高でした」と感想を述べた。
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16日に聖ヨハネ聖公会で開かれた原爆追悼コンサート。小さな教会に著名歌手や楽団が集結し、教会メンバーも驚きを隠せなかった。これを実現させたアドリアーノ・ジオゴ氏は、非日系ながら第二次大戦後の勝ち負け紛争中に起こった人権問題に注目し、その真相に迫る映画『闇の一日』の上映にも協力した人物だ。そんな彼と初対面し、地球の反対側で日本人の人権問題に取り組む人がいることをしみじみ実感。今回の追悼イベントにそんな非日系の計らいがあったことを、日本の人々にもぜひ知ってほしい。