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日系の新しい時代の波

 何か新しい時代の到来―といった感さえある。100年という時間は、民族に押し寄せる押しては返す波のようだ。若手日系人4人のグループ「エン・ラッソス」(En Lacos=縁・絆)のことだ。今日付け7面トップ記事で詳しく伝えている。是非読んでほしいと思う▼三、四世の日系人が呼びかけ、音楽やダンスで日本移民を顕彰するイベントを29日に開く。ブラジル社会のなかで生きるなかで、日系人に対する評価を実感し、自分たちの先祖である移民世代へ感謝の気持ちを伝えたい、というのが趣旨だ。むしろ、ブラジル社会に出たからこそ分かった自分の足元に意識が向いたということだろう。そういう気持ちは多くの人が持っているのだと思う。ただ、それが外へ、または同世代の日系人に向けた発信になっていることが興味深い▼一般的にいえば、大半の日系人は外面はもちろん、内面も同化していっていると言っていい。多くの一世からは、「もう彼らはブラジル人だよ」といった声を聞いたりもする。それは色んな意味をはらんでいるのだが、決していい意味合いではないことが多い。だが、次世代はしっかりいい部分、悪い部分を感じ取り、自分のルーツにあるいい部分はしっかり受け継ごうとしている▼おりしも戦後70年を迎えた。日系社会では、日本とは別に「勝ち負け」という違う戦争が始まったと言ってもいい。それがゆえに、戦前生まれの二世たちは、日本的なものを拒絶し、よりブラジル人たろうとした。そういう観点で、このイベントから時代の変わり目を感じてしまうのはコラム子だけだろうか。主催者の思いは、参加者、来場者らにどう伝わるだろうか。イベントの成功を祈りたい。(剛)