経済危機の深刻化の回避と脱出を目的として、連邦政府が公的銀行に製造業を中心に極めて安い金利で貸付を行うよう勧めた。その影には民主運動党(PMDB)の力が強く、ジョアキン・レヴィ財務相を押し切った形となった。19日付伯字紙が報じている。
これを受け、連邦貯蓄銀行(CAIXA)が18日、自動車メーカーや同業界に資材を供給する企業を対象に、2015年末までに約50億レアルを、現行より低い金利かつ長期で貸し付けると発表した。
ただ、これには条件があり、企業は貸付を申請する際、「従業員を解雇しない」という約束を交わすことが必須条件となる。貸付用の資金は、CAIXAと勤続期間保障基金(FGTS)、労働者支援基金(FAT)から調達される。
19日には、ブラジル銀行も、民間銀行とほぼ同じ利率で同様の貸付を行うことを発表した。
前企画相で、現在はCAIXA総裁であるミリアム・ベルキオール氏は、今回の対策の目的は「企業に一息つかせるため」と語っている。同総裁は「私たちはあらゆる生産部門に対応したい」とも語っており、食品、紙・セルロース、化学、製薬、電気・電化製品、電力、通信、ガス・石油、機械、部品の11部門とも交渉中だ。
同様の対策は2008~14年にも行われていた。だが、レヴィ財務相が就任してからは、民間銀行による貸付を活発化させるために、公的銀行による低利貸付は中断されていた。だが、生産性の低下と失業率上昇に加え、15年に続き16年も2年続きのリセッション(景気後退)が予想されはじめたことで、同財務相も屈した。
今回の対策は、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)とリオ工業連盟(Firjan)が6日に、PMDBのミシェル・テメル副大統領が前日に提示した「今は国が一つとなって建て直しを図るべきとき」との提案支持を表明したことがきっかけで、実現に至った。Fiesp会長のパウロ・スカッフィ氏はPMDB党員だ。これらの工業連盟の意向は、レナン・カリェイロス上院議長(PMDB)が10日に提案した景気回復提案の中にも盛り込まれていた。
連邦政府は、従業員解雇の防止と共に財政調整にも傾注している。テメル副大統領は18日、副大統領官邸を訪れた企業家たちに、財政調整法案の最後の柱である、2011~15年に行っていた企業向けの減税措置見直しへの理解を求めた。企業家たちは減税措置の見直しを段階的に行うよう求めたが、上院は下院が承認した課税率を維持する意向だ。この見直しで政府は125億レアルの増収を見込んでいる。